ニコン製カメラを支えるタイ工場、現地社員も共有する品質重視のベクトル


 現場の管理を任されているのは、ここで古くから働いてきたタイ人たちだ。管理職76人のうち、45人はタイ人のマネージャー。部長級の役職に就いているタイ人も3人いる。

1991年設立の工場だが、勤続年数が10年以上のタイ人正社員はすでに800人ほどおり、定着率は高い。「タイの東大」ともいわれる王立チュラロンコン大学で機械工学などを修めた優秀な技術者も珍しくない。

日本のニコンの社員がタイに技術を教えに行くだけでなく、その逆も行われている。新製品の開発、立ち上げなどの段階では、30人程度のタイ人社員がプロ向け機種や検査装置を製造している仙台ニコンに派遣される。その滞在期間は3カ月から半年にも及ぶ。彼らは新製品立ち上げ時に備えた組み立て実習や担当分野の最新技術の勉強を行うほか、製造現場の意見を上流の開発部門に反映させる役割も担う。各工程の配分時間は適切か、部品の配置は組み立て現場から見て合理的かといった現場ならではの意見を開発部門に伝えるのである。

製造管理部で働くプラパン・ウェットボリスさん(34)はすでに10回以上日本に研修に行った。「自分でアイデアを出してカイゼンを行うのはやりがいがあって楽しい。将来は世界に誇れるようなニコン独自の方式を自分が作りたい」。流暢な日本語でそう語り、笑顔を見せる。

レンズ製造部で2300人の部下を率いているネッパナパー・マハヨーティさん(36)も「ニコンの同僚は皆仲良しで家族のような存在。今タイではミドルレンジまでのレンズを作っているが、将来はプロ向けのレンズも作りたい」と先を見据えている。最高級のプロ向けを含め、すべての製品をアユタヤで作れるようにしたいというのがマハヨーティさんの夢だ。

そして、すでにそうした動きは現実となりつつある。カメラ製造の要といえる検査装置や自動調整器。製品の品質を左右する重要な要素であるこうした装置については、もともとはすべて仙台ニコンで製作し、アユタヤに持ち込んでいた。だが、ここ1~2年で工学部卒の現地社員たちが内製を始め、現在は比較的簡単なものを中心に、カメラ組立工程の基幹装置の約2割がアユタヤ製になった。

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