安くて合理的な「団体定期」を知っていますか ひとつだけ保険に入るなら?

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次に挙げられるメリットは、大変シンプルなプランであることです。1年単位の掛捨ての死亡保障保険なので、必要な保障額を毎年見直して加入することができます。保障の最高額は企業によって異なりますが、通常、かなりの高額プランとなっていますので、従業員が必要とする保障は団体定期保険でほぼ確保することができるでしょう。

加入手続きも驚くほど簡単です。多くの企業では従業員に定期的な健康診断を義務付けています。そこで団体定期では、通常であれば保険加入の際に必要とされる健康診断も省略されます。日々、正常に勤務さえしていれば、あとは本人の簡単な告知だけで加入手続きは終わりです。加入後も、保険料支払いは通常給与天引きで、年1回の配当金も給与口座に振り込まれまるなど、手間要らずです。

透明性の高いガラス張りの保険収支

皆さんは、自分の払った保険料がどのように使われ、保険会社に手数料をいくら取られ、保険金支払い後に残った保険料がどう使われているか、あまりご存じないと思います。保険会社がその詳細を開示していないからです。ところが、団体定期は年1回、その詳細が企業に報告されます。

たとえば、年間で支払った保険料、死亡した従業員数、支払われた保険金額、その結果残った保険料、そこから還元される配当金、そして差し引きすると保険会社の手数料もわかります。死亡者の数が少ない場合は配当金が増え、多い場合は配当金が出ないこともあります。そこで従業員は自分の支払った保険料から、亡くなった同僚の遺族に保険金が支払われていることを実感します。残った保険料が配分され、配当金として自分に戻ってくるプロセスを毎年、肌感覚で知ることができます。

このように、団体定期保険は保険収支の詳細をすべて開示しています。保険本来の「相互扶助」の仕組みを企業・団体単位で実現する商品内容となっているのです。ですから、団体定期保険は実態として、米国で発達している「自家保険(セルフ・インシュランス)」に近いものとなっています。その意味で、保険の原点である「相互扶助」性を踏まえた素晴らしい商品である、と言えましょう。

死亡保障が必要な人は、まず自分の所属する企業や団体で団体定期保険が実施されているかどうかを確認しましょう。厚生部門や保険担当部署に照会すればすぐにわかります。

導入されていれば、最優先で団体定期保険を検討すべきです。大企業の従業員でも、せっかく実施されている団体定期に入らず、わざわざ個別の生命保険に入っている人が多いのですが、実にもったいない話です。

あいにく実施されていなければ、個別の生命保険に入るしかありません。団体定期に比べると保険料は割高ですが、仕方ありません。その場合、保険プランは死亡保障だけのシンプルな掛捨てを選びましょう。そして、保険料が比較的安いネット系、通販系生保会社の定期保険を検討するとよいと思います。

橋爪 健人 保険を知り尽くした男

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はしづめたけと / Taketo Hashizume

1974年東北大学卒、1984年米国デューク大学修士。日本生命保険に入社後、ホールセール企画部門、米国留学、法人営業部門を経て米国日本生命副社長。帰国後、損保会社出向、ジャパン・アフィニティ(保険ブローカー会社)代表取締役を経て2004年独立。企業向け保険ビジネスのコンサルタントとして活動。著書に『日本人が保険で大損する仕組み』(日本経済新聞出版社)

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