中国経済は、短期中立、中長期では悲観?(上)《若手記者・スタンフォード留学記 33》

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 一つ目が、輸出の停滞が長引く公算が大きいこと。

そもそも、今回の経済危機の根底には、アメリカの過大消費に支えられた輸出バブル崩壊があります。バブルが剥げ落ちたことで、世界中で貿易が落ち込み、日本、韓国、中国などの輸出立国が苦境に立たされているわけです。つまり、過去数年の輸出はバブルによりかさ上げされていたものなので、景気が底を打っても、不況前のレベルまで輸出が回復するとは考えられません。

冷戦以後の中国における経済成長を支えたプラス要因--アメリカ一極支配による世界の安定、グローバル化による世界貿易の急拡大、金余りによる中国への直接投資の急増など--が、今後は以前ほど望めないでしょう。

2つ目に、中国の内需が急速に伸びるとは思えません。

中国の個人消費が伸び悩む(2008年の家計貯蓄率は28.8%)背景には、医療・年金などセイフティーネットの脆弱さがあることは、多くの識者が指摘しています。たとえば、2003年に中国衛生部が行った調査によると、病気にかかった人間の半数は、費用が払えないため、医者に診てもらうことができなかったといいます。

もちろん、温家宝首相を筆頭に、現体制もセイフティーネット拡充の必要性は認識し、2004年から「和諧社会」というスローガンの下、社会福祉政策の充実を図っています。しかし、そうしたビジョンをもったトップがいても、状況はほとんど改善されていません。実際、4兆元の政府支出の中で大半を占めるのはインフラ投資で、医療福祉分野に割かれるのは全体の4%以下にすぎません。貯蓄率を引き下げて、消費を活発化させる力はなさそうです。

利権に群がる地方の役人たち

では、なぜセイフティーネットの整備が遅れているのでしょうか?

その一つの理由として、今回の旅で会った複数の経済学者が指摘していたのは、「すでに政府は手を打ち始めてはいるが、医療・福祉の整備には長い時間がかかるから」というもの。

しかし、私は、最大の理由は「地方政府の暴走と利権構造」にあると思います。
 
 3年ほど前、米『フォーチュン』誌の中国担当記者にインタビューした際、彼がことさら強調していたのは「経済政策において、中国は“中央集権”では全くない。むしろ、中央政府が地方政府をコントロールできていない」という点。その構造は現在も変わっていません。中国の分権的な体制は、各地方の競争を促すというメリットはありますが、国全体の利益を考えた政策の施行を難しくするというデメリットもあります。

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