中国経済は、短期中立、中長期では悲観?(上)《若手記者・スタンフォード留学記 33》

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 北京で会った専門家の間でも、大きな暴動が現政権を揺るがすという予想は皆無でした。 

たとえば、現在中国に駐在している米国人ジャーナリストのジェームズ・ファローズ氏(彼は1990年前後に日本に滞在。日本に関する著作もあります)は、「文化大革命で人生のどん底を味わった世代の人間にしてみれば、現在の危機など大したことない」という論理で、暴動の可能性を否定しています(参照:China’s Way Forward 『アトランティック・マンスリー』2009年4月号)。

文化大革命を味わっていない若者、とくに仕事のない新卒の大学生は、今の不況に怒りをつのらせているでしょうが、一人っ子世代で相対的に裕福な時代を生きている彼らに、政府を揺るがすほどの暴動を起こす破壊力があるかは疑問に思います。

まとめると、中国で話を聞いた専門家ほど楽観的ではありませんが、暴動により現体制が崩壊するという最悪のシナリオが現実となる可能性も極めて低そうです。短期的には楽観することはできないが、悲観することもないということで、中立でしょうか。

「長期化する輸出停滞」と「鈍い内需の伸び」

では、中長期的な中国経済についてはどうでしょうか? 

この点については、専門家の間でも意見が分かれていました。

楽観派の意見は、「中国ではすぐに中間層が育ち、輸出の伸びが停滞しても、内需拡大によって高成長が維持できる。今回の経済危機は、低賃金の製造業から、より高度な産業にシフトするよいきっかけになる」というもの。

一方の悲観派は「高齢化の到来に加え、政治改革やセイフティーネット充実の遅れにより、経済成長は減速する」という見方をしていました。私にはこちらのほうが現実的に思えます。

今後10~15年の中国経済を占うときに、最もありえないと思うのは、「2ケタ、もしくは、1ケタ後半の経済成長が安定的に続く」というシナリオです。

私が中国経済の中長期的な行方に対して、悲観的な理由は主に5つあります。

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