二面性を抱えて驀進する中国経済の懸念点 消費は有望だが、製造業は過剰設備が重荷に

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米国利上げは、相当にゆっくりした速度になるだろう。イエレン議長は“Gradual”に、と言っているが、この言葉を意訳すると「年4回x0.25%=1%」ということになる。つまり3月、6月、9月、12月のFOMCで、利上げをするつもりですわよ、皆さん、と言っているようなものだ。とはいえ、「そんなに順調にはいかないよね」というのが衆目の一致するところ。とりあえず今の状況では、3月の利上げはほぼ消えたと見ていいだろう。

ということで、上記2点は日本経済にはプラスに働くはずである。やっぱりよくわからないのは中国経済、ということになる。先月、筆者は中国社会科学院日本研究所の招きで、久しぶりに北京を訪れた。濃厚なPM2.5に耐えての弾丸出張であったが、その際の体験も併せて中国経済について語ってみたい。

一人当たりGDP8000ドルのインパクト

今週、中国国家統計局が発表したGDP統計では、2015年暦年の成長率が6.9%と、25年ぶりの低い伸びとなった。その直後にIMFが「世界経済見通し」を更新したが、今後の中国経済を6.3%(16年)、6.0%(17年)成長としている。このまま減速が続くというシナリオで、世界全体の成長率も3.4%(16年)、3.6%(17年)という緩やかなものになる。

ところで中国のGDPを実額ベースでみると、名目ではすでに10兆ドルを超えている。日本が中国に追い抜かれたのは2010年のことであったが、今では向こうがもう2倍になってしまった。それだけ大きな経済が6%成長というのも一種の奇観であって、このまま安定成長に向かうと見るのが自然であろう。

ここで10兆ドルを13億人で割ってみると、一人当たりでは約8000ドルということになる。これはマレーシア(約1万1000ドル)よりは下だが、タイ(約6000ドル)よりは上となる。新興国としてはまずまずだが、何より人口を考えればどえらい水準といえる。

平均で8000ドルということは、上のほうには相当な富裕層ができていることは想像に難くない。さらに10年前の2006年には、中国の一人当たりGDPは2000ドルに過ぎなかった。収入が10年で4倍になれば、そりゃあ個人消費が伸びるのは当然というもの。おそらくは数億人が、家もクルマも電化製品も欲しいものはひととおりそろえてしまっている。そうすると消費の対象は、徐々にモノからサービスに移っていくはずである。

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