北朝鮮の実験失敗は安堵すべきことではない 核開発をやめさせるにはどうしたらいいか

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北朝鮮は今回、核融合装置の実験に成功したと宣言することで、エリートクラブでエリート中のエリートに入ったと言っているのだ。このことが金正恩第一書記を強力な指導者に見せている。それが北朝鮮がプロパガンダでやろうとしたことなのではないか。

金正恩は現在33歳だと言われているが、この偉業をその年齢で達成したことが彼の地位を高める意味でも役に立つのだろう。また、朝鮮労働党は5月に大規模な党大会を開催予定で、今回の実験を行ったことは、金正恩が北朝鮮での支持を確立する意味で大きな価値があった。

北朝鮮の自信過剰は心配の種

──戦略的な観点から見て、今回の実験がアジア情勢に与える影響をどう見るか。

現実として非常に危険な領域に突入していると思う。北朝鮮はここ数年、韓国に対して警戒感を煽るような通常攻撃を何度も行ってきた。外から見れば無謀にも見えた人もいるだろう。

これが北朝鮮の話の始め方なのだ。韓国には優れた在来技術があるが、それが韓国の優位を意味しているわけではない。北朝鮮の指導者は自国を、朝鮮半島で唯一の核兵器保有国だと見ており、「韓国に応酬などできるものか」とみている。この血気盛んな態度は心配の種だ。計算違いや、対立のエスカレートを招くリスクが伴うからだ。

北朝鮮から再び通常攻撃を受けた場合、韓国は本気になって素早く行動を起こし、問題に終止符を打つと言わんばかりの勢いで報復するだろう。私はこれを危険だと考えている。

韓国の軍事的指導者や政治家の一部が、米国の戦術的核兵器を再導入を要求していることも問題だ。韓国における米国の存在を強化することで、抑止力を高めたいのだ。

加えて、新たな核実験を決行した北朝鮮に中国も危機感を募らせている。中国は北朝鮮について、依然として貧しく、米国の関心を平和協定などの仲介に向けさせようと必死になっている国だと考えている。これは米国が妥協すれば可能であり、米国はそうすべきだと考えている。

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