新鎌ヶ谷駅は千葉県民の「森林愛」に満ちている 駅舎リニューアル時に地元の山武杉を活用

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「よし。この助成金に応募しよう」。事前に駅舎のレイアウト、使用したい木材の資材、厚み、必要な強度など細かな要件を資料として千葉県森林課に提出した。すべて資料に出すことにより千葉県から承認される。クリアしなければいけない項目は多岐にわたったが、吉成氏はひとつひとつ確実に詰めていった。

北総鉄道企画室の伊藤隆広氏(右)と技術部工務課の吉成真氏(左、筆者撮影)

実は吉成氏、「木」には詳しかった。吉成氏の部署では、もともと北総鉄道の沿線の木々の管理を担当していた。鉄道沿線には樹木が生えている場所が少なくないが、こうした木々は適切に管理していないと、台風や豪雨のときなどに倒れてしまい、鉄道の運行に重大な影響を及ぼす。千葉県は面積の3分の1が山林で占められており、鉄道各社にとって沿線に生える木の管理は重要な仕事であった。

台風15号の際も北総鉄道の沿線では倒木などの被害はゼロだった。吉成氏が説明する。

「当社では沿線の木々が生えている場所すべての地権者の方々と連絡を密に取っており、常時、施設区の職員たちが沿線の木を点検しています。この北総鉄道は東京と成田空港を結ぶスカイライナーが通っている輸送線です。倒木のせいで列車が止まったり遅れたりするなど、運行に支障が起きるようなことがあってはいけません」

木の伐採は森林を育てるため

点検では、フェンスに張り出してきそうな木だけではなく、間引きをしたほうがよい木、中もチェックして病気で倒れそうな木も探して撤去する。業者を手配することもあるが、緊急性が高ければその場で自分が切る。

そのように仕事上でも木と関わり合いの深い吉成氏だが、「ちばの木の香る街づくり推進事業補助金」の助成を受けるにあたって、さらに木の勉強をさせてもらったという。

その師となったのが、千葉県庁農林水産部森林課森林経営管理室の髙木純一氏と木村真琴氏だ。「ちばの木の香る街づくり推進事業補助金」は、育ちきった木を伐採し、山に新しい苗木を植えることによって健全な森林を保ち、その伐採した木を千葉県民が多く利用する場所に資源として使ってもらって循環させることが目的だという。成熟した木の伐採は森林破壊ではなく、森林を育てるものだ。育ちきった木を伐り新しい苗を植えていくことが、森林の持つ水源の涵養や山地災害の防止、地球温暖化防止につながっていく。

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