【産業天気図・証券業】金融危機直撃でまさにどしゃ降りの「雨」が続く。リストラ、大型再編も進む
日本の証券会社にとっては、主力とする株式委託手数料収入が漸減傾向にあるほか、IPO(新規株式公開)や増資引き受けなどの投資銀行業も低調。投資信託の販売も苦戦している。
「会社四季報」春号では、上場証券21社の今09年3月期業績予想について、光世証券<8617>、カブドットコム証券<8703>を除く19社の営業損益(野村HDは税前損益)を減額した。赤字予想は18社に上り、前号の14社から増えた。
野村HDは一連の金融混乱に伴うポジション(持ち高)の損失に加えて、経営破綻したリーマンから欧州・アジア部門の人員を雇い入れたほかに、インドのIT子会社の買収に関連した費用を一時的に計上。本業も投資環境の悪化が直撃しており、6500億円の税前赤字を予想している。大和証券グループ本社<8601>以下の主要証券会社についても、苦しい決算を強いられるだろう。
続く来10年3月期についても、赤字基調が続くと想定している。金融危機は世界の実体経済へと波及し、各国景気や企業業績の悪化につながっている。従来、金融商品への投資に向けられていた資金は、預貯金や国債・社債などの安全な資産へと“逃避”している。株式や投信、投資銀行業など、証券会社の事業領域のあらゆる分野が苦戦を強いられそうだ。「会社四季報」春号では、上場証券21社の来10年3月期業績予想については、17社について営業赤字が続くと予想した。
証券界にはリストラの波が押し寄せている。主要な会社のほとんどが営業赤字に陥っている事態では、体力の劣る会社は、固定費である人件費を削減しなければ、赤字を垂れ流し続けることになるからだ。しかしながら、「人を削ればその分、営業力は落ちる」(中堅証券幹部)との指摘もある。
そうした中で、今後、テーマになってきそうなのは大手に限らず、中堅中小、銀行なども含めた再編だ。すでに昨秋、野村HDがリーマンの実質的な部門買収に踏み切ったが、今年に入って、米シティグループが傘下の日興コーディアル証券を非中核部門と位置づけ、売却の検討を始めたもようだ。これに、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>(MUFG)を始め、みずほフィナンシャルグループ<8411>(みずほFG)、三井住友フィナンシャルグループ<8316>(SMFG)が関心を示し、水面下で交渉が進んでいるようだ。