「楽園企業のIT断食」が、ちょっとスゴすぎる 営業マンは「席にパソコンなし」その理由は?

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IT営業全盛の今、未来工業はパソコンを使わず、社用携帯電話もナシ。その理由を山田氏に問うたところ、「パソコン営業は、百害あって一利なしや」のシンプルな答えが返ってきた。

その理由を明らかにする前に、同社のまるで時代錯誤のような、超アナログのIT断食ぶりを紹介したい。

営業の携帯へ電話代タダの「ツー切りコール」

1. パソコンを占有していいのは、本社の業務課、営業所の業務担当だけ(それ以外の社員はひとり1台のパソコン利用を禁止)

「携帯電話もパソコンも、目の前にあれば、たいして必要はなくても、誰だって使いたくなるもんや」というのが生前の山田氏の考え方だった。

だから、1998年から本社は営業部業務課、全国の営業所なら業務担当の、いずれも女性社員を除き、営業担当者のひとり1台のパソコン利用は原則禁止になった。本社の営業部長さえ、仕事でパソコンはたまにしか使わないという。

「今思えば、営業用チラシをパソコンで作って得意先に送信して、仕事をしたつもりになっていたのがバカらしく思えますよ」(営業部長)

2. 電話線を切った固定電話が、営業マンの机に置かれていた

まだ携帯電話が普及する前は、電話線が切られた固定電話が、営業マン全員の机の上に置かれていたこともある。それは何を意味していたのか?

「机の前に座っているヒマがあれば、お客さんのところへ行って、製品ひとつでも余計に売ってこい!」

それが、山田氏からすべての営業マンへのメッセージだった。1965年の未来工業創業時から営業担当で、創業者でもあった山田昭男氏の変わらない考え方で、それは今も受け継がれている。

3. 営業の個人携帯へは、電話代タダの「ツー切りコール」がルール

たとえば、取引先から外回りの営業マンへの問い合わせの電話が、本社営業部にかかってくる。営業マンは本社に普段はいないから、営業部業務課の女性社員が対応する。

彼女たちが答えられない内容なら、営業マンがもつ個人の携帯やスマホに連絡するのだが、その電話代は本社の負担になってしまう。

「日本一のドケチ社長」と呼ばれていた山田氏が、そんなムダ遣いを見逃すはずはない。そこで編み出されたのが、営業の個人携帯を2回鳴らして切る「ツー切りコール」。これなら本社の電話代はタダだからだ。

「じゃあ、2回鳴るまでに電話に出たら?」と突っ込む人もいるだろうが、発信元の番号を見れば、新人営業マンでも本社からだとわかる。「日本一のドケチ社長」にあとで怒られるのは嫌だから、2回以内で電話に出る営業マンはいなかったようだ。

しかし、なぜ未来工業はそこまで「IT断食」を徹底するのだろうか。その真の狙いは、「コスト」以外に何があるのか?

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