「楽園企業のIT断食」が、ちょっとスゴすぎる 営業マンは「席にパソコンなし」その理由は?

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「パソコン営業は、百害あって一利なし」という山田氏の真意を以下、山田語録とともに探ってみたい。そこには「たんなるコスト削減」を超えた、山田氏の営業哲学が見えてくる。

ノルマ以上に、営業マンを奮い立たせるもの

山田語録1「ネットニュースを見るのは、仕事ではない。パソコンを使っていると、遊んどるのか、働いとるのか、よくわからん」

毎朝出社すると、まず「ネットニュース」のエンタメ欄をチェック。それが習慣という人は、山田氏の発言を読んで、ドキッとしたにちがいない。

パソコンで仕事をしている人は、業務時間中、本当に「仕事のためだけ」にパソコンを使っているだろうか? ついつい仕事に関係のないサイトを見たり、ネットサーフィンをしたりして、ムダな時間を浪費していないだろうか?

未来工業は1日の就業時間7時間15分で、一部の部署を除いて残業禁止が原則。職場のパソコンでネットサーフィンなんかしていたら、あっという間に就業時間は7時間以下になり、残り仕事ばかりが積み上がってしまう。現実問題、未来工業の営業職がパソコンを触っているヒマはない。

IT営業が全盛の今、むしろ、それが仕事での高い生産性を支えている面がある。

山田語録2「営業マンはお客さんの前に立ってこそ営業やろ」

取引先にこまめに顔を出すのは面倒くさい。たとえば、営業チラシをパソコンで作り、メールで送れば済む。それで仕事をした気分になれる人もいるはずだ。

しかし、それではチラシを初めて見たとき、相手の表情の変化から何かのメッセージを読み取ることはできない。それでは「営業」にならない。

職種にもよるが、営業の仕事の本質は、いろいろなお客さんと仲良くなること。そして新製品の中から相手に気に入ってもらえそうなものを選ぶ目を身につけることだ。

相手によって、値段が高くても使い勝手がいい製品を好む人もいれば、単純に安ければ安いほどいいという人もいる。相手のニーズに沿った製品を、いかにうまくプレゼンして売り上げを増せるのかが勝負だ。

だからこそ、「靴底を減らして現場に何度も通い、お客さんの前に立ってこそ営業」という仕事が欠かせない。

山田語録3「おまえが失敗しても会社は傾かない。だから会社を代表してお客さんに製品を説明しろ」

要するに、この語録は、「失敗を恐れずにガンガンやれ。多少の尻拭いはオレがやるから」と、会社のトップがそう断言しているのと同じ。

そこまで言われて、「やってやるぞ!」と意気に感じない営業マンはいない。上司が部下に仕事を任せるとは、細かく口出しせずに、「任せきる」ことなのだ。お客さんの前にさえ立てば、誰でも売れるわけではない。

それは今や誰もがやっている分だけ、差別化が難しくなっているIT営業よりも、実は大きな差別化になっている。同時に、会社からの信頼感こそが、ノルマ以上に、個々の営業職を奮い立たせているはずだからだ。

時間を効果的に使い、営業の本質を忘れず、社員に「任せきる」――。そのために導入された98年以来の「IT断食」が、未来工業の好業績を支えている要因のひとつのような気がしてならない。

荒川 龍 ルポライター

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あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

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