僕が「アルメニア人大虐殺」を題材にした理由

ファティ・アキン監督が語るタブーへの挑戦

――この映画を作るのはタブーだったそうですが、タブーを冒すことを恐れなかった?

きっと僕が好奇心の強い人間だからかな。妻には「あなたはクレイジーよ」と言われるんだけどね。ただ、アートを作るためには少しはクレイジーなものが必要なのかもしれない。この映画を作ったことで、特にファシスト系の人から死の宣告を受けて、脅されることもあった。でもそんなことをされると逆にアドレナリンが放出されてくるんだ。それは最高のドラッグみたいなもんだよね。

トルコには行けなくなっても恐れてない

過酷な労働や処刑から生き延びた男は、生き別れになった娘との再会を願う© Gordon Mühle/ bombero international

――怖いなと思ったことは?

僕が唯一恐れを感じるのは高さだけ(笑)。僕は高所恐怖症なんでね。もし何かを変えたいと思うのならば、ちょっとばかりクレイジーなことはしなければならないからね。そういう意味で僕はクレイジーなのかもしれないし、後先を考えないでやってしまうところはある。だからこそこういうことができるのかもしれないけどね。

――家族は心配しませんか?

タブーを冒すことは怖くなかったが、トルコには簡単に行けなくなった© Gordon Mühle/ bombero international

ケンカをする前には、相手がどう出てくるかを先に読み取らないといけない。かつて僕が若かった頃にはストリートギャングに入っていたんだけど、ケンカをする際には相手をよく観察していたんだ。そのうえでこいつとまともにケンカをしたらやられるだろうなと思ったら、相手を刺激しないで丸く収めるくらいのかしこさはあったからね。逆にこいつならいけそうだなと思ったらケンカをするんだけどね。

この映画はまさにそういう感じだったんだ。どういう結果になるかはわかっていたし、脅迫なども来るだろうなとは思っていたけども、そんなに真剣には受け取らないようにしようと思っていた。ただ結果としてトルコには簡単には行けなくなってしまった。以前なら普通にバーやレストランに行くことができたけども、今はそれも難しくなった。

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