【産業天気図・鉄道/バス】JRは「晴れ」持続、私鉄大手は08年度は薄日射す

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2008年度の鉄道業界の景況は私鉄大手で現況の「曇り」から、薄日が射してきそうだ。また、上場JR3社は「晴れ」が続きそうだ。私鉄大手は沿線人口の増加や大型商業施設の開設など好材料に恵まれたことで状況は好転しつつある。また、JR各社も「駅ナカ」物販等の好調さに支えられ08年度も順調に業績を伸ばす見通しだ。
 足元の08年3月期を見ると、まず第3四半期(2007年4~12月)までの業績は、私鉄大手13社(非上場の西武ホールディングスを除き、阪急阪神ホールディングス<9042>は旧阪神電鉄を前期初から経営統合したとして比較)の合計で、売上高5兆1548億円(前年同期比0.3%減)、営業利益4231億円(同0.2%増)、経常利益3552億円(同0.1%減)、第3四半期利益2013億円(同5.1%減)だった。中間期までと同様に、若干の減収ながら、小幅の営業増益を確保したが、経常利益はやや減少に転じた。
 上場JR3社(東日本旅客鉄道<9020>、西日本旅客鉄道<9021>、東海旅客鉄道<9022>)の第3四半期は、売上高4兆1386億円(同2.4%増)、営業利益8828億円(同6.4%増)、経常利益6466億円(同10.1%増)、第3四半期利益3664億円(同5.2%増)と、JR東海を中心に引き続き好調だった。
 一方、「会社四季報 08年2集・春号」での08年3月期の業績予想は私鉄大手13社合計で、売上高7兆1110億円(前期比1.2%減)、営業利益5156億円(同9.5%減)、経常利益4152億円(同13.4%減)、当期利益2293億円(同15.2%減)。会社予想合計に比べて、営業利益で33億円上回る。
 今期の私鉄大手の収益動向を要約すると、鉄道の輸送人員はパスモ導入(関東圏)に伴う計上方法の変更もあって、関東圏中心に好調だった。また、関東圏は沿線人口の増加や景気回復、好天、話題の商業施設の相次ぐ開業など複数の好要素に恵まれた。しかし、パスモ関連や償却制度変更、さらに鉄道安全投資や車両投資に伴う減価償却増が運輸部門の利益を圧迫。また、第2の収益柱である不動産部門が前期にあった大型販売物件の剥落などで減益に転じる会社が多かったこともあって、総じて営業減益予想となっている。
 一方、JR3社の08年3月期通期は売上高5兆5290億円(同2.2%増)、営業利益9972億円(同3.2%増)、経常利益6980億円(同8.9%増)、当期利益3970億円(同7.4%増)を「四季報」では見込んでいる。JR東海は会社側が通期予想を増額済みだが、「四季報」ではJR東日本も営業利益が会社計画を50億円上回ると見ている。
 JR東海はドル箱の東海道新幹線の収入が4%増と好調、JR東日本も東北・上越新幹線、首都圏通勤線が伸びている。加えて、JR東日本は昨年11月に東京駅八重洲口に高層ビル2棟がオープン。10月にも東京駅地下「グランスタ」、立川駅「エキュート」という2つの大型駅ナカ物販店が開業している。
 09年3月期は私鉄大手13社合計で、売上高7兆0880億円(07年度予想比0.3%減)、営業利益5250億円(同1.8%増)、経常利益4255億円(同2.5%増)、当期利益2322億円(同1.3%増)、と四季報では予想している。減収予想となるのは、小田急電鉄<9007>が4月1日に小田急建設を大和ハウス工業に譲渡することに伴う減収(570億円)や、阪急阪神ホールディングスで2008年3月期下期から阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合に伴い、阪神百貨店が持分会社に移行しているが、その通期化に伴う減収分が発生するためだ。この2社合計で2009年3月期は890億円の減収を四季報では見ている。また、東京地下鉄副都心線の6月開業と東京都交通局の日暮里・舎人ライナーの3月開業に伴って30億円の減収効果が見込まれる東武鉄道<9001>と、南海電気鉄道<9044>も減収予想となっている。前者2社の特殊要因を除くと、小幅の増収が見込まれるのは鉄道の輸送人員は小幅増が続くこと、不動産は不透明感が強いものの販売が多少回復することや、不動産賃貸が拡充することが挙げられる。鉄道のパスモ関連や制度改正に伴う減価償却負担の圧迫は2009年3月期には一服する。営業利益の大幅回復が見込まれているのは名古屋鉄道<9048>。当期利益の回復が鈍いのは東京急行電鉄<9005>、京王電鉄<9008>の2社で鉄道整備のための準備金取り崩しが減ったり、終了するためだ。
 JR3社合計の2009年3月期予想は、売上高5兆6010億円(同1.3%増)、営業利益1兆0370億円(同4.0%増)、経常利益7470億円(同7.0%増)、当期利益4200億円(同5.8%増)と見ている。JR東海とJR西日本は横ばい程度を見込んでいるが、JR東日本が営業利益7.0%増を見込むなど牽引する。JR東日本も副都心線開業の影響(減収30億円)を受けるが、これを吸収して運輸収入は1%程度の増加を見込むうえに、東京駅周辺の高層ビル3棟、大型駅ナカ物販2店が通期寄与することが大きい。高層ビル群は2008年3月期では、初期負担が大きかっただけに、利益面で2009年3月期に大きく貢献してくる。
 私鉄大手は流通やレジャー・サービス、ホテルなどの売り上げ比重も大きく、これらは個人消費関連だけに2009年3月期業績を予想するとき、一抹の不安材料といえるが、これらの利益寄与度はもともとそれほど大きくないこと、収益柱の鉄道は沿線人口の増加などから、関東を中心に漸増基調にあることや、鉄道収入は景気に対して遅行性があることから2009年3月期は私鉄大手は「薄日」、上場JRは「晴れ」と見てよいだろう。
【中川 和彦記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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