オカルトについてもまじめに研究されている--『脳には妙なクセがある』を書いた池谷裕二氏(脳研究者、東京大学大学院薬学系研究科准教授)に聞く
人気の脳研究者が3年ぶりに新著を刊行。最新の知見豊富に、「妙に人間的なクセがある」脳の本性が次々と解明されていく。
──200を超える参考文献を引用しています。
文献を読むのが好きで、日曜日も祝日も関係なく研究室に行く。毎日何百本と論文が出てくる。朝起きたら自分の関連分野をまずチェック。違う分野でもタイトルを見て面白ければ印刷して持ち歩く。電車の中や信号待ちといったときに、さっと目を通す。
──飽くなき探究心ですね。
研究者は誰もみな文献をよく読む。最先端の世界についていかねばならないから。私が異常なのは、それを文章で引用して外に発信することだ。研究会などで「そんな文章を書いている暇があったら、とっとと実験しろ」とよくしかられる。しかし、ほかの人がスポーツなど趣味にいそしんでいるときに、私は文章を書いているだけだ。私自身は飽きっぽくて一つのことに集中できない性質であり、自分の研究に役立たなくても、それらを読んでいるだけで楽しい。
──刺激的な内容のオンパレードです。たとえば、肌の老化を防ぐという魔法の物質ボトックスについて触れています。
その論文が出てまだ1年は経ってない。そういうのも入れておこうと思った。ボトックスは食中毒の原因として知られるボツリヌス菌の毒素。筋肉を弛緩させる作用があるので、顔に注射すると、シワができにくくなる。と同時に、ほかの人の感情も読みにくくなってしまうが。