それでは、仮に私の見通し通りに円安トレンドが終了した場合、円高基調がどのくらいの水準まで進むと考えるのが妥当であるのでしょうか。これも前回の記事の繰り返しになってくどいようですが、私は購買力平価(消費者物価ベース)の100円~105円あたりがひとつの目安になるのではないかと考えています。
ただし、ここで意識しなければならないのは、仮に円相場が120円を割り込み、110円を目指すような展開になったとしたら、日銀の追加緩和が行われる可能性が徐々に高まっていくだろうということです。
日銀は2015年10月に株式市場が期待していた追加緩和を行いませんでしたが、それは株式市場の期待だけでは追加緩和が行われることはないという証左であります。これまでの安倍首相と黒田総裁の発言の変遷とその関係性を見ていると、日銀(黒田総裁)が追加緩和を行う強い動機は、今後は安倍政権の要請以外には考えられないといえるのです。
外貨投資は難しい時期に入ってくる
ですから、円安から円高へとトレンド転換した相場がさしたる大きな抵抗もなく、ずるずると100円~105円のレンジに近づいていくというのは、予想することができないわけです。円高が予想以上に進む過程では株価も大幅に下落していくので、株高が生命線である安倍政権が急きょ態度を変え、黒田総裁に追加緩和を催促するようになると考えるのが自然であるからです。
おそらくは、円相場が110円に接近するあたりには、株式市場でも追加緩和への期待が相当に高まっていくだけでなく、安倍首相の発言にも変化が見られ始め、実際に追加緩和が決定される可能性が高まっていくのではないでしょうか。
外貨投資の分野では、私は自らの予測に基づき、2012年12月にドルだけに集中投資を開始し、2015年11月~12月にかけて123円台ですべて売却しましたが、2016年は安倍首相や黒田総裁の発言の変遷を見ながら、ドルの買い場を一回は探っても良いのではないかと考えております。追加緩和の内容にもよりますが、5円~10円の幅で利益を得られる可能性は十分にあります。
ただし、ドル投資の黄金の3年間はすでに終わってしまったと認識するべきでしょうし、だからといって、新興国通貨を買うのも拙速すぎると考えております。2016年以降の大きな流れでは、外貨投資は非常に難しい時期に入ってくるのではないでしょうか。
また、株式市場や原油価格の大きな流れについては、『日本株は、いよいよバブルの領域に入った』(6月25日)や『原油価格、「1バレル30ドル時代」が来る』(8月11日)で述べていますが、新しい流れの兆候が感じられた時は、この連載やブログ等で触れたいと思っております。
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