震災直後に一時解放された囚人は何をしたか 関東大震災の渦中に起きた奇跡の物語

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激震と猛火で大量の無惨な死に直面した人々が異常な心理状態にあった震災当時、都市部では朝鮮人に対する日頃の差別感情と蔑視の後ろ暗さが憎悪と恐怖に変わり、根拠のないうわさが凄まじい勢いで広まっていたのだ。そして、流言飛語の恐怖が市民を朝鮮人狩りへ走らせる。

本当に恐ろしいのは…?

やがてその流言蜚語の波は、刑務所の内部にも入り込んできた。典獄を快く思わなかった司法省の役人たちが乗り込み、職員や囚人たちに、あることないことを吹き込んでいく。一時的な動揺こそ見せるものの、典獄の強力なリーダーシップのもと持ちこたえる囚人たち。

しかし、囚人たちの秩序あふれる善行が後世への記録に残されることは一切なかった。一般人の流言蜚語がもたらした外交上の問題、その後始末をするためには囚人に汚名を被せるしかないという政治的判断が下されてしまうのだ。天災と国家と民衆と囚人。本当に恐ろしいのが何なのか、ぜひその目で確かめていただきたい。

著者は、生き長らえていた当事者や関係者の子孫たちの細かな話を拾い上げ、当時の情景を鮮やかに描き出した。そこからは、囚人たちの名誉を回復させたいという思いだけではなく、刑罰の意味そのものを問い直したいという強い気持ちが伝わってくる。

むろん、この事実だけをもって有事には囚人のほうが信頼できるなどと言うつもりはない。だが、「解放」という制度が今なお残されていること、そして有事には加害者と被害者が入れ替わる可能性があることさえ念頭に入れておけば、無用な二次災害も防げるのかもしれない。

真実が明かされるまでに要した100年近くの月日は、あまりにも重い。そして無意識に流言蜚語へ加担することは、犯罪そのものよりもタチが悪いのだ。

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