農業用貯水池が引き起こす「内陸津波」の恐怖 中国の人災土砂崩れは他人事ではない
内陸津波の被害を知る人は少ないのだが、この問題を12月10日の衆院農水委員会で香川県選出の玉木雄一郎衆院議員(民主党)が取り上げた。
香川県には貯水量1540万トンで、灌漑用ため池としては日本一の規模を誇る満濃池がある。この貯水池はわずか3カ月足らずで弘法大師が造成したという伝説で有名だ。
玉木議員はこの問題を農水委員会で取り上げた理由を以下のように説明する。
「東日本大震災が起こった時、私は土地改良予算を担当していたので、急きょ2011年度第3次補正予算でため池の対策予算を新設・拡充した。しかし最近の予算を見ていると、ため池の防災について関心が薄れているような感じがしてならない」
ため池の震災対策予算が減少
確かに民主党政権時の2011年度第3次補正予算では、「震災対策農業水利施設整備事業」と「地滑り対策事業」が新設され、それぞれ7億1000万円、11億5900万円計上されている。さらに2012年度当初予算では、それらは23億8200万円、28億7900万円と増額された。2012年度補正予算では、「農村地域防災減災事業」が新設されて204億7300万円が計上された上、「震災対策農業水利施設整備事業」は284億円、「地滑り対策事業」は18億5400万円というように、防災関連予算は合計で507億2700万円とピークを迎えている。
だがこうした防災関連予算は2013年度当初予算で267億1000万円、同年度補正予算で209億5500万円と横ばいになったが、2014年度は当初予算で273億6800万円、補正予算で37億2600万円。2015年度の当初予算では280億1500万円と、縮小傾向を見せている。たとえばハザードマップを作る定額補助は本年度限りになっており、このままでは耐震化予算がなくなってしまう恐れもある。
しかしながら、ため池防災についての一般の関心は高いとはいえない。理由のひとつは地震による決壊事例が少ないこと。近年で死傷者が出たのは、1854年の安政南海地震の際に満濃池が決壊したことがあるくらいのようだ。
地域的に西日本に集中していることも、全国的な危機意識が持ちにくいという理由だ。だが耐震調査の結果、全国で1787カ所ものため池に耐震性不足が確認された。このまま放置すれば、30年以内に70%以上の確率で発生すると言われている南海トラフ地震が起こった場合にどうなるのか。
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