農業用貯水池が引き起こす「内陸津波」の恐怖 中国の人災土砂崩れは他人事ではない

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国による被害想定でも、ため池の堤防が決壊して土石流や洪水に巻き込まれて死傷者が出るということを明記している。よって国の責任は極めて大きいというのが、玉木氏の主張だ。

「今年9月に鬼怒川が住宅地の近くで決壊したように、絶対的な安全というのはないと考えるべきだ。海の津波は危険性がよく認識されているために正面から来る災害と言えるが、内陸津波は背後からの災害と言える。それを防止するのが国の責務。もし起こったら、行政訴訟にもなりかねない」。

内陸津波は「逃げる時間」がない

さらにいえば、海の津波が陸部に押し寄せるのにはある程度の時間がかかるが、内陸津波は決壊とともに瞬時に起こる。逃げる時間がないというのも特徴のひとつだ。また、ため池災害は決して一部の地方の問題として軽視すべきではない。藤沼貯水池の内陸津波の悲劇から、多くのことを学ばなければならないのだ。

たとえば藤沼貯水池は農水省の「ため池100選」に選ばれており、その周辺は80ヘクタールもの広大な自然公園になっており、キャンプ場やアウトドアゴルフ場も整備されていた。近くには温泉施設も作られ、桜の名所としても有名で、年間10万人の観光客が訪れていた。もし観光のピーク時に大地震が起こり、決壊したらどうなったか。被害はより大きかったに違いない。

ため池自体の管理も、より丁寧に行う必要がある。多くのため池はその管理が地元に委ねられているが、専門性やコスト負担の面で課題は多い。実際に藤沼貯水池は被災前、管理者による日常点検や定期点検では異常は認められなかったが、施工年次が古い場合は、点検で異常が見られなくても、強い地震や異常降水量の場合には崩壊の可能性を否定すべきではないだろう。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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