平和・PGM連合が繰り出す資本増強策とは 子会社優先株なら希薄化せず開示も不要!?
ただ、メガバンクの場合は税務上の恩恵を狙い、タックスヘイブンに設立した海外子会社が発行体になっており、本件のような国内の主要子会社での発行ではなかった。その後、バーゼルIII(10年9月公表)ではTier1への算入が認められない可能性が出てきたため、メガバンクはバーゼルIIIの正式公表以前の09年後半頃から発行を中止している。
昨今、増資は、希薄化を連想させるマイナス材料として市場が反応する傾向にあり、全日本空輸も増資を発表したとたんに株価が急落した。
いいことづくめに見えるこのスキーム、「上場会社の完全子会社に対する第三者割当増資は頻繁に行われるものではない」(ファイナンス実務に詳しい川村一博弁護士)というから、盲点だったということだろう。
子会社発行なら、東証の判断は「開示不要」
メガバンクの優先出資証券のケースと最も異なるのは開示である。メガバンクは発行のつど、個別開示を行っていたが、今回、PGMホールディングスはこの優先株発行について個別開示を行っていない。第2四半期の決算短信や決算説明資料などに、「財務面におきましては、連結子会社であるパシフィックゴルフプロパティーズ株式会社が、120億円の優先株式を発行し、財務体質の強化を図っております」という一文が載っているだけだ。優先配当の配当条件や割当先についての記載はない。
かつて大幅な希薄化を招くにもかかわらず、取締役会決議だけで発行を決めてしまう野方図な第三者割当増資が横行した反省から、現在では上場会社自身が行う第三者割当増資にはさまざまな開示義務が課せられている。25%以上の希薄化を招く調達や、支配株主の異動を伴う調達の場合は、第三者から意見書をとらなければならないし、発行条件が有利発行に当たらない根拠や、発行条件の決定プロセスも開示しなければならない。
だが、子会社の調達に関しては基本的に開示義務はない。「東証の有価証券上場規程403条において、上場会社の子会社が資金調達に関する決定を行うことが“当該上場会社の子会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事項であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの”に該当すれば、開示の対象になるが、そうでなければ開示の対象にはならない」(川村弁護士)。