ジーターが選んだ引退後の意外なキャリア 元スポーツ選手ならではの情報サイトを開設

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ジーターがこの財団を立ち上げたのは、引退後ではなく、ルーキー時代の1996年のことだ。「大ファンだったデーブ・ウィンフィールドが、スポーツ選手で自分の財団を立ち上げた草分け的存在だったから」と、ジーターは語る。それにジーターの父親は薬物中毒者のカウンセラーだった。「子供の頃から、成功したら両親と同じことをすると宣言していた」。

スポーツ記者への不信感

現役時代、政治家並みに報道陣をうまくあしらうことで知られたジーターは、個人の軽率な発言がいかにチームに打撃を与えるかを仲間に忠告していたという。それが「ザ・プレーヤーズ・トリビューン」につながった。

「スポーツ選手とメディアの関係に少しでも亀裂がないと思う言う人間は、嘘をついていると思う」と、ジーターは言う。「野球だけでなく、いろんなスポーツ選手たちと話してわかったんだ。多くのスポーツ選手は、マスコミに正直に自分の胸の内を語ることを躊躇している。本来の趣旨とは違う形で引用されることを恐れているからだ」。

「そこで、スポーツ選手がファンに自分の話を意図したとおりに伝えられる場所、ファンと純粋な対話ができる手段を作りたいと思ったんだ。マスコミを排除しようとしているんじゃない。むしろ補完しようとしている」。

それでも一部のメディアは、ジーターのやり方では、熟練記者が問い詰めたり、事実を確認したりするプロセスがないから、スポーツ選手者側による情報操作やごまかしが可能になると批判する。

こうした批判に対して、ジーターはあきれた顔で言った。「スポーツ選手が書いた記事について、質問すればいいじゃないか」と、ジーターは言う。「別に質問しちゃいけないってわけじゃない。コービーは引退表明の2時間後には記者会見もしただろう?」。

ジーターは、「ザ・プレーヤーズ・トリビューン」に「とても、とても、とても、とても」深く関わっているという。サイトには彼の名前が入っているから、「ジーターの基準」を満たさなければいけないと考えているのだ。

だからといって、いつもコンピューターを覗き込み、見出しや記事をチェックしているわけではない。「私は記事の編集はしない」と、ジーターはトレードマークの輝く笑みを浮かべて言った。「私は自分が知らないことを知るのがすごくうまいんだ」。

(執筆:ALEX WILLIAMS記者、翻訳:藤原朝子)

(C)2015 New York Times News Service

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