高品質でありながら価格も手頃で、例えばいちばん人気の「7玉長柄箒」は4500円(税抜)。伝統工芸品として作られる箒では数万円するものも珍しくない中、リーズナブルである。
現在、日本では原料の棕櫚皮がとれなくなっており、国産に徹すると価格が跳ね上がってしまう状況だ。しかし、土田代表は、「ほうきを日常的に使ってほしい」という強い思いから、使いやすく頑丈なほうきを買いやすい価格で提供することにこだわっている。そのため、原料は中国雲南省からパーツ加工した状態で輸入し、重要な部分を日本の職人が仕上げるという生産体制を作った。
棕櫚皮は束に、黒竹は切り揃えた状態に中国で加工しているが、このパーツ制作も日本の職人が技術指導しており、品質には自信を持っているという。
現在、使用者の口コミで広がる実需を始め、結婚祝いや新築祝い、企業の記念品といったギフト需要も高い。購買層としては30~40代の主婦が多いが、最近では20代の購入も増えているそうだ。
若き社長との出会いを機に売り上げが急増
「棕櫚箒は、2010年から販売を始め、早くも翌年からコンスタントに売れるようになった。東日本大震災を機に、手工芸が見直されるようになったという見方もできるかもしれません」。
こう話すのは、リアルジャパンプロジェクト(以下、RJP)の河内宏仁社長だ。同社は、2009年から日本のものづくりや地域産業のブランディング事業を展開している。取引先の商品を販売するウェブサイトでは約1000点の商品を扱っているが、中でも棕櫚箒は創業初期からのロングセラー商品だそう。
もともと山本勝之助商店は、手作り市などで棕櫚箒を直売していた。当時からよく売れる商品だったが、実は急激に売り上げを伸ばしたのは、このRJPのウェブサイトで販売を始めたことがきっかけだ。
かねてより棕櫚箒を扱いたいと願っていた河内社長は、和歌山県の工房を訪ね歩き、山本勝之助商店と出会った。ほうきに惚れこんだのはもちろん、「ほうき文化を後世に伝えたい」という土田代表の思いが自身の事業理念と一致すると感じたそう。
「うちは、職人を全面に押し出す形で販売をしています。『地場産業は敷居が高い、職人は気難しい』というイメージを、もっと身近でスタンダードなものに変えたいから。いいものを『カッコイイ』と普通に感じ、生活の中に溶け込む形で使ってほしい。そうなれば、伝統を次の100年へとつなげることができると思っています」(河内社長)。
最初は、土田代表も職人たちも「オンラインでほうきなんて売れるのか」と懐疑的だったが、河内社長の熱意に押されたようだ。「誠実さと、新事業への意欲を感じました」と、土田代表は振り返り、こう続ける。「実際、HPで丁寧に商品や当社について説明をしてくれました。おかげさまで販売数を順調に伸ばし、職人もモチベーションが上がっています」。
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