和田秀樹氏「日本の医学界は宗教団体のよう」 薬は押し売り状態、だから医者は飲まない

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和田秀樹(わだ ひでき)/1960年生まれ。東京大学医学部卒業。東大医学部附属病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長、一橋大学経済学部非常勤講師、川崎幸病院精神科顧問なども務める。著書に『医者よ、老人を殺すな!』『医学部の大罪』など多数

──高血圧治療薬のディオバン事件がありました。

ディオバンという薬を日本で使ったら5年後、10年後に脳梗塞や心筋梗塞が減るというロングタームのエビデンスを作ろうとした。製薬会社のノバルティス ファーマには勝算があったのだろう。だけど、日本人は体質や食生活が違った。エビデンスが出なかった。データを改ざんした医者のモラルの問題に帰するところが大きいが、問題の本質は海外でいいといわれる薬でも日本人には当てはまらないこともあることだ。

もともと人間の体の中で何が起こっているかわからないことは多い。脳梗塞や心筋梗塞は動脈硬化によって血液の通路が狭くなり起こるのだとしたら、血圧の低いほうが詰まりやすいかもしれない。それでも薬で血圧を下げたほうが動脈の壁が厚くなりにくいからいいとするかどうか。この種のことも実験してみないとわからない。長期の実験をしなければ、従来の説を宗教のように後生大事に信じてしまうことになる。

日本人のエビデンスが薬にはほとんどない

──ほとんど長期の調査には基づいていないのですか。

長期の疫学調査によっていくつか有用なデータは出ている。たとえば小金井市総合健康調査は15年間高齢者を追いかけ、コレステロールは高めのほうがいいとの結果が出た。また仙台の郊外では太めの人が長生きしていたといった調査結果もある。ただし、その結果に対して医学の世界は積極的に応えようとしない。

──なぜ?

自分たちのドグマを守ることのほうが大事なのだ。そして宗教と同じで異端の説を出した人を追放にかかる。新たな説を証明し、これまでの定説をひっくり返すことが科学の歴史のはずだが、医学界ではそうならない。守旧派の学会ボスに逆らったら大学医学部の教授にもなれないからだ。ただし、学会ボスが定年退職すると、しばしば新しい説が使われるようになる。

──新しい有力な説はまず「隠れキリシタン」になるのですか。

日本は「正常値」主義に振り回されている。たとえばコレステロールがそう。まだ15年は今の教授たちのメンツを潰すからそうはできないが、彼らが引退したら、コレステロールも血糖値もむしろ高めでコントロールしたほうがいいとなるだろう。このことは世界的な医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』や『ランセット』にも出ていることだが、これについては学会ボスがインチキ視している。

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