(第58回)企業が高度専門家を評価するのが第一歩

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いわゆる「文科系」については、専門教育の必要性がまったく認識されてこなかった。特に金融分野では、国内の金融業務の中心が専門的知識を必要としない間接金融だったため、「金融業務のために専門的な高等教育は必要ない」というのが、一般的な考えだった。「ジェネラリストであることが重要であり、職務に必要な知識は就職してからあとのオン・ザ・ジョブ・トレーニングで身につければよい」との考えだ。

その結果が、これまで見てきたことだ。バブル期には誰もができる財テクと不動産投資に、誰もが熱中した。投資銀行業務に脱皮できなかった大きな原因は、金融のプロが存在しなかったことだ。そして、今は国債を保有するだけの資産運用だ。ニューヨーク証券取引所には有力中国企業が多数上場しているのに、東京証券取引所には上場しない。

そのため、米国では生みだされている雇用と所得が日本では生まれない。そして、巨額の対外資産を保有しながら適切に運用できず、アメリカやイギリスに安い利回りでの資金調達を可能とさせている。

中国のビジネススクールも遅れている

アメリカでは、奨学金以外にも、高等教育に対する補助がある。アメリカの税制は、大学・大学院の学費の税額控除を認めている。国の施策として高度専門家の教育を補助しているのだ。これに対して、日本で国の制度として行われているのは、雇用調整助成金だ。これは企業にとって不要な人々の研修への補助である。

米国の場合は、これから就職しようという人に対する、高度な専門的知識を得ることへの補助だ。それに対して日本の措置は、すでに職を得ている人々に対する、雇用され続けることへの補助である。どちらが将来の経済を強くするか、改めて説明するまでもなく、答えは明々白々だ。

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