(第58回)企業が高度専門家を評価するのが第一歩

日本の社会は専門家教育を評価せず

もっとも、ハーバード・ビジネススクールに入学できる学生なら、学部卒でも給与は4・8万ドルよりは高いだろう。米国のPayScale(ペイスケール)社のウェブサイトにあるデータによると、ハーバード大卒業生の初任給の中間値は5・5万ドルだ。ただ、この数字を使っても、ROIは29・4%になる。

しかも、奨学金が充実しているので、実際には自己負担の費用はもっと少ない。したがって、能力のある者にとっては、「勉強しなくては損」ということになるわけだ。

図に示すのは、ペイスケールが計算した、学部卒の場合の「大学教育の収益率」である。ビジネススクールに比べれば低いものの、トップ校の場合、10%以上という高い値になっている。奨学金を受けた場合には、収益率がさらに高まる。

以上で見たように、アメリカのビジネススクールの場合、どれだけコストをかけて勉強すればどれだけの利益があるかが、明確に計算できる。給与が上がるのは、社会がビジネススクールの教育を評価しているからである。

これに対して、日本では高等教育での専門的教育が必要と見なされているのは、医学の分野だけだ。エンジニアは専門家と見なされているが、工学部の教育がどれだけの評価を受けているのかは、疑問である。


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