(第58回)企業が高度専門家を評価するのが第一歩

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日本でも高度専門家の必要性が認識されるようになり、「専門職大学院」の制度が03年に作られた。しかし、内実が伴わないで量的な拡大だけなされた感がある。この結果、法科大学院では供給過剰状態になっている。

これまで見てきたように、日本の金融力は弱い。ファイナンスが専門的な仕事と見なされていないことの結果である。この状態から脱するには、金融の世界では、専門的知識がないとどうにもならないほど高度化していることを認識し、その分野の専門家を評価することが必要だ。

その評価は、給与に反映させるのが最もわかりやすい。経営者がこうした専門家の必要性を認識し、待遇と給与でその評価を現実に示してほしい。そうしたことを実現する企業が未来を拓いてゆくだろう。

中国の状況はどうだろうか。ビジネススクールは、日本と似た事情だ。エンジニアリングの大学院は充実しているが、ビジネススクールは新しく、規模も小さい。社会主義国家だったことを考えれば、当然のこととも言える。

北京大学のビジネススクールは、04年に深センに設立された。現在は、HSBCビジネススクールと呼ばれており、香港大学と共同で修士、博士のコースや経営者向けプログラムなどを提供している。教育は英語で行われる。教授陣の大半はアメリカの一流大学での博士号取得者だ。

精華大学では、経済・経営大学院の中にファイナンスの修士コースがある。ファイナンス学部は1985年に創設された。

中国からのアメリカへの留学生が極めて多数いることを考えると、今後、中国のファイナンスのスタッフは急速に拡充されていくはずだ。当然、学生も増えていくだろう。そうなると、日本の立ち遅れは一層明確になる。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)

(週刊東洋経済2012年8月4日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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