パイオニア新型カーナビの実力 業界に革命を起こせるか
ハードウエア開発を担当した古賀哲�・カー事業戦略部スマート・ビジョン事業開発室副主事は「レーザー素子は動作温度の条件が厳しい。家庭用のAV機器とは異なり、HUDを据え付ける自動車の中は最高で70~80℃にも達する。こうした条件下でも正常に機能し、悪い条件下では保護機能を働かせるといった開発に苦労した」と振り返る。
HUDといえばダッシュボードに装置を据え付け、フロントガラス部分をディスプレーにする方式が多いが、「ダッシュボード据え付け方式も検討したものの、ダッシュボードとフロントガラスの形状は車種によってまちまちで無理だった。サンバイザー部に専用スクリーンを取り付ける方式にすることで、一般市販車の7割程度に対応できるようになった」(古賀氏)と説明する。取り付け部分の無改造では7割程度の対応ながら、自動車への多少の加工を許容するなら、ほとんどの車種に取り付けは可能のようだ。
今枝洋一氏(左)と古賀哲�氏
風景と重ね合わせることになるHUD側にどのような情報を表示させるかもポイントとなった。情報量が少なくてはナビにならず、多すぎては見づらいうえに情報処理も追いつかない。ソフトウエア開発に携わったスマート・ビジョン事業開発室の今枝洋一氏は「実際にさまざまなパターンで表示して検証を繰り返した。専門家の協力も得ながら、まさにトライ&エラーで決めていった」と言う。
カーナビ本体とHUDユニットはブルートゥース無線で接続しているが、「カーナビ本体の持つ高い処理能力を基盤に、通信などの遅延時間を計算に入れたデータの先行処理で、風景とHUD表示の同期を実現している」(今枝氏)。
発売前から注目を集めるパイオニアのHUDだが、一般に手が届くといっても本体セットで32万円前後、HUDユニット(オプション扱い)だけでも希望小売価格で10.5万円と、まだまだクルマ好き向けの「キワモノ」商品の枠を出てはいない。
だが、「視線移動が少ないHUDは、余計な脳活動も不要で事故のリスク軽減につながると考えられる。HUDの方向にカーナビは進化するのではないか」(篠原菊紀・諏訪東京理科大学教授)といった専門家の見方もある。実体験的にもHUDは見やすいように感じる。
古賀氏らは、今後は高価格の要因ともなっているレーザー部品のコストダウンなど、幅広い層にも受け入れられるような商品の開発を進め、「カーナビのスタンダードに育てていきたい」と意気込んでいる。
(丸山尚文 =東洋経済オンライン)
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