フィンテック「決済革命」で銀行はどうなるか 急拡大する新金融サービスの光と陰

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決済サービス、特に電子マネー系のものは、本人確認が甘いものもある。つまり、マネーロンダリングの温床になる可能性もある。ビットコインでもそこが指摘されている。最近もIS(Islamic State:イスラム国)がプリペイドカードを使ってテロを準備していたことがわかった。

このように、電子マネーは一定額なら匿名で使えるため追跡しにくく、フランスは購入時の規制強化を決めた。ISは仮想通貨ビットコインで資金を貯めているとの指摘もある。当局によるテロ資金対策は一段と困難になる。そのため、本人確認などは管理手続きに織り込まざるをえない。既存の銀行ネットワークを介さない仮想通貨は、当局の監視の目が届きにくい。

また金融商品として見た場合、悪意を持った仕手筋などの対象になる可能性も否めないこともある。利便性とリスクは裏腹の関係にあるのだ。

銀行はどう対応すべきか

決済業務に限らず、銀行は、その業務では安全性と信頼に基づき、顧客との長期的な関係を重視している。それに対しフィンテック企業は、利便性・機動性を重視するネットの原理で動いている。顧客数では、世界につながっているFacebook(筆者も利用している)などのネットワークのほうが多く、つながる可能性を秘めている。この「つながる」ということが「決済」では大事なポイントなのである。

しかし、大きな時代の流れの中で銀行などの金融機関は、ある程度のリスクを覚悟したうえで、フィンテックに取り組まざるをえない。たとえば、銀行では口座を持たない決済は考えられないが、フィンテックはそういったこれまでの銀行の概念・常識を変える。そして、それは新しいIT(情報通信技術)が導入され、イノベーティブな業務とならざるをえない。

銀行をはじめとした日本の大きな組織は、こうしたイノベーションへの取り込みを苦手としている。同じ大組織で対応するため、組織の既存の業務を食っていくことがあると、その動きを潰しにかかる可能性もある。まさに「イノベーションのジレンマ」が発生する。そのため、もし銀行などの従来の金融機関が、フィンテックに対応するのならば、旧組織と分離させて対応することが成功の秘訣となる。

筆者は、お金の流れを司る「決済」は、「航空」に極めて似た性質を持つと考えている。このフィンテックに対する対応は、まさに航空会社のLCC(ロー・コスト・キャリア)の運営と一緒で、「別会社」をつくり、いわゆる銀行とは“まったく違う考え方”で運営することが大事と考えている。それが、銀行がフィンテックで成功する秘訣だと言えよう。

宿輪 純一 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)

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しゅくわ じゅんいち / Junichi Shukuwa

帝京大学経済学部教授・博士(経済学)。1963年生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒。富士銀行、三和銀行、三菱東京UFJ銀行を経て、2015年より現職。2003年から兼務で東大大学院、早大、慶大等で非常勤講師。財務省・金融庁・経産省・外務省、全銀協等の委員会参加。主な著書に『通貨経済学入門(第2版)』『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞出版社)、『決済インフラ入門〔2020年版〕』(東洋経済新報社)、『円安vs.円高(新版)』『決済システムのすべて(第3版)』『証券決済システムのすべて(第2版)』『金融が支える日本経済』(共著:東洋経済新報社)などがある。

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