フィンテック「決済革命」で銀行はどうなるか 急拡大する新金融サービスの光と陰

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ケニアの「M-Pesa(エムペサ)」はケニアの携帯電話会社サファリコム(Safaricom:ボーダフォン系)のモバイル送金サービスで、ショートメッセージ(SMS)で手続きや本人認証をする。Mはモバイルで、Pesaはスワヒリ語で「おカネ」を意味する。銀行口座がなくても送金可能で、銀行が十分に普及していない中、送金やおカネの貸借が容易になった。ケニアにおいて人口の約3割(1300万人)が登録しており、海外へも拡大中である。

「Bitcoin(ビットコイン)」も、まさにフィンテックである。中本哲史氏の理論に基づいて発行された一種の電子マネーであるが、「通貨」に近いものになっている。世界中と決済でき、発行量もコントロールされている。世界のドルや円などの先進国通貨が量的金融緩和によって価値を落としていく中、価格が高騰したこともあった。そのため、そもそもは決済サービスがメインであったが、日本では投資(投機)対象としての取引が多い。

渋谷にあった最大手の取引所マウントゴックス(MtGox)の破綻により、日本では一時ブームも収まったが、それは言うなればひとつの銀行が強盗に入られたイメージに近いそうで、通貨としてのビットコインそのものの価値には大きい影響はなかった。

ビットコインには、中心となる機関やシステムはない。現時点では、PtoP(Peer to Peer:Peerは端末のイメージ)と呼ばれるネットワーク全体で記録を取っていく「ブロックチェーン技術」というものである。これは皆で監視しているため不正もできないというもので、注目を集めている。

現在、シティバンクやドイツ銀行など、欧米の主要約20の銀行で調査・研究グループが立ち上がっており、ホストコンピューターの勘定系で管理する銀行の決済業務を根底から変える可能性もある。日本からは三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行が参加している。

管理・監視システムの整備が課題

フィンテックによって垣根を超えて決済サービスが急速に発展している現状では、実際、管理する法的な対応が後手に回ることは仕方ないことである。

日本では決済サービスを行う事業者としては、銀行、電子マネー業者、決済サービス業者が存在してその管理が分かれており、対応も欧州など海外と同様に統一する方向で検討が進んでいる。

日本でも数年前に「資金決済法」が施行されたが、早くもその枠を超えてきている。フィンテックの新決済サービスは国境という概念を超えるため、海外との平仄(ひょうそく)を合わせることも重要な観点となっている。

サービスというものに共通していることでもあるが、特に「決済」では、利便性・効率性(コスト)・安全性(リスク)の3つの観点(モノサシ)で総合的に判断される。つまり安くても、リスクがあまりにも高いものはダメなのである。

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