ピーター・ティールが見た日本企業の優位性 楽天・三木谷社長と起業論で激突

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楽天主催のカンファレンスのパネルディスカッションに登場した三木谷浩史社長(左)と、ピーター・ティール氏(右)。三木谷社長が「日本はグローバルスタンダードを受け入れるべき」とした一方、ティール氏が「複雑なものをつなげる日本のやり方はすばらしい」と評価する場面も(撮影:梅谷秀司)

日米を代表する2人の起業家が大いに語り合った。

ITと金融の現在と今後の関係性をテーマに2月23日、楽天が都内で開催した「楽天金融カンファレンス2015」。イベントのラストを飾るパネルディスカッションで、楽天の三木谷浩史会長兼社長と対峙したのは、米ネット決済大手ペイパルの共同創業者で、シリコンバレーで最も注目される投資家のひとりでもあるピーター・ティール氏。両者はITと金融の融合から起業家論まで熱気を帯びたやり取りを展開した。

三木谷社長「ビットコイン、おそらく使う」

この日、最大のテーマとなったのは、ネット決済などに代表される、金融とITを融合した「フィンテック(FinTech)」と呼ばれる分野。電子決済はペイパルを始め、モバイル分野でもアップルの「Apple Pay」、グーグルの「Google Wallet」など世界規模のプレイヤーが参入するほか、米スクエアなど新興企業も続々と登場している。

フィンテックについて、どのような印象を持っているかを問われたティール氏は「ネットやITビジネスが金融テクノロジー関連分野で進展していくことは自然な展開」と可能性の大きさを評価。その上で、「規制が強い業界なので、その壁を越えられるかが、ネット関連のほかの分野とは違う」と金融業界に特有の障壁があるとも語った。

一方、三木谷社長は、金融業界では今後、ビジネスモデルや通貨に対する概念が変わっていくとの期待感を示した。仮想通貨のビットコインを楽天のサービスに導入する可能性について「考えてはいます。おそらく、使うでしょう」と、導入時期は"企業秘密"としつつも、前向きに検討していることを明かした。政府による規制の有無については「障壁があるかどうかもわからない。政府は、なるべくあいまいにしているようだ。私が把握している限りでは、楽天にビットコインを導入するのに、明示的な規制障壁はないと思う」と話した。

楽天が1997年、ペイパルが1998年と起業時期がほぼ重なる2人。だが、その後、これまでにそれぞれが歩んできた道は大きく異なる。

今も先頭に立って楽天グループを牽引する三木谷社長に対し、ティール氏は2002年、ネットオークション大手米イーベイにペイパルを売却し、投資家へと転身。米フェイスブックの最初期の外部出資者となるなど、つねにその動向が注目されている。売却を振り返ったティール氏は「売却はある意味では、確かに悲しいこと。今でも売らなければ、どうなっていただろうかと考えてしまう」としつつ、売却当時のイーベイは決済額の75%がペイパル経由で、合理的な売却だったと説明。売却後にイーベイ傘下で急速な発展を遂げた結果、「今は75%がイーベイ以外の支払いで使われている。ペイパルの分社化が合理的な状況になってきた」と、成長を遂げたことを力説した。

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