サムスン、好発進した後継体制の舞台裏 長男・李在鎔副会長体制の成果と課題
「ギャラクシーS6はオール・ニュー・ギャラクシー(All New Galaxy)のために初心に戻り、ゼロベースから始めたスマートフォンです」
スペイン・バルセロナで開催されたモバイルワールドコングレス(MWC)の2日目となる3月1日、サムスン電子は新製品であるギャラクシーS6、同S6エッジを披露した。6000人のIT担当記者などメディア関係者の視線が、同社ITモバイル(IM)部門の申宗均(シン・ジョンギュン)社長に降り注いだ。プレゼンテーションを行う彼の声は、かすかに震えていた。プレッシャーと不安がありありとわかった。
しかし翌日、記者懇談会に出てきたシン社長は、一種の余裕を感じさせる表情を見せた。「歴代最高のスマートフォン」と高く評価されたためだ。米ウオールストリートジャーナル紙(WSJ)は「ギャラクシーS6のハードウェアを見れば、サムスン電子を信頼できる。ソフトウェアからは同社の努力を見た。ギャラクシーS6は世界を感動させるサムスン電子のチャレンジ」とまで述べた。
背水の陣だった「ギャラクシーS6」
「空を飛んでいるような気分だった」。MWCから帰国したサムスンの役員は、誰もが安堵し、また喜びの声を上げた。そうだろう。2012~13年、サムスン電子は最高の2年間を過ごした。韓国企業では初の売上高200兆ウォンに達し、2013年第3四半期には四半期決算では初めて、営業利益を10兆ウォン台に乗せた。韓国企業史に長く残る業績だった。
しかし、それは長く続かなかった。昨年3月に投入したギャラクシーS5が惨敗。何をやってもうまくいかなかった。プレミアムモデルではアップルに押され、中・低価格帯のモデルではシャオミ(小米)、ファーウェイ(華威)など中国メーカーの追撃を許してしまった。
2014年第4四半期には、シェアトップの座を4年ぶりに明け渡した。アップルのシェアは20.4%、サムスン電子は19.9%。2013年第4四半期には29.5%でサムスン電子が圧倒的にトップだったにも関わらず、だ。
業績も落ち込んだ。第3四半期の売上高は12年第2四半期以降50兆ウォンを下回り、営業利益もまた4兆ウォン台に転落。わずか1年で営業利益の60%が吹き飛んだ。半導体と家電は堅調である分、すべての批判はIM部門に集中した。
そのような崖っぷちの状況で、背水の陣で製造したギャラクシーS6が高い評価を受けたわけだ。サムスン関係者は、「渾身の力を振り絞ってつくったので自信はあったが、昨年秋に登場したiPhone6の人気がとても負担だった」と打ち明ける。
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