サムスン、好発進した後継体制の舞台裏

長男・李在鎔副会長体制の成果と課題

社員以上に安堵した人間がもう一人いた。李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長だ。李副会長は2014年5月、李健煕会長が倒れて入院して以来、サムスングループの総指揮を任された。事実上、李会長の現場復帰が難しくなり、今後は李副会長にすべての関心が高まるほかない。

ギャラクシーS6は李副会長体制となって初めて出た新製品だ。サムスングループの中心はサムスン電子、サムスン電子の中心はスマホ。もしギャラクシーS6の評価が悪ければ、これはそのまま彼の経営能力への評価につながる。

それを理解している李副会長は、ギャラクシーS6の開発過程から気を遣ってきたという。年末の定期人事でIM部門の役員を入れ替えたのがそのきっかけだった。申社長は留任となったが、マーケティングや開発、デザイン関連の役員の相当数が異動となった。ギャラクシー神話の主役だった李燉珠(イ・ドンジュ)マーケティング担当社長も辞任した。そして、李副会長は陣頭指揮を行った。彼は役員にはいつでも電話をかけ進行状況を点検し、アイデアも出したという。

父・李健煕会長が倒れ、危機も到来

3月4日に米国出張を終えて帰国した李副会長を待ち構えていた記者から「ギャラクシーS6の市場での反応がとてもよいが」と聞かれると、「売ってみないとわからない」と注意深い発言をした。しかし、ギャラクシーS6と同S6エッジの販売量が5000万台以上という予測が流れると、「本当にそうなのか」と何回も尋ねたという。

実際に、李副会長のスタートはよくなかった。李会長が倒れ、突然に経営を引き継ぐことになり、期待よりは心配が多かった。さらには、グループをめぐる経営環境が肯定的ではなかった。待ってましたとばかりに、サムスングループの売上高と営業利益が急減した。すべてが李副会長のせいではないが、タイミングがあまりにも悪すぎた。スマホ市場が飽和状態になりシェアが落ち始めた。歯止めをかけようと投入したギャラクシーS5は市場から無視された。

サムスングループのリーダーたるサムスン電子が揺らげば、二番手、三番手企業も揺らいでしまう。サムスンSDI、サムスン電機、サムスンディスプレーなどグループのIT関係会社は、サムスン電子の業績悪化による悪影響を避けられず、サムスン重工業やサムスン物産など他の企業も深い泥沼にはまってしまった。サムスン生命やサムスン火災などの金融系企業の業績はそれなりによかったが、グループの長男・サムスン電子の業績不振を埋めるほどではなかった。ちょうど李会長が病に倒れた時期は、業績不振のグループ会社をひとつひとつ取り上げ、危機の経営に拍車をかけて組織に緊張感を植え付けようとした矢先だった。

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