サムスン、好発進した後継体制の舞台裏

長男・李在鎔副会長体制の成果と課題

市場や社会的な心配とは反し、「李在鎔のサムスン」は比較的に巡航速度で進んでいるという評価が支配的だ。とはいえ、超えるべき山も多い。まず、グループの中核企業・サムスン電子がその役割をきちんと果たすべきだろう。同社はグループ全体の営業利益の75%、売上高でも47%を占める。グループ収益の源泉であると同時に、成長性も大きい。そのためには、新事業を育てることも重要だが、スマホ事業も今後成長させなければならない。李副会長が力を入れているIoTやスマートホームなどは、スマホが基盤となる。フィンテックは言うまでもない。車両であれ電子製品であれ、IoTが活性化しても、結局は手に取るスマホがキーになる。システムを管理するのもスマホだ。

つまり、ギャラクシーがきちんと売れなければいけない、ということだ。2014年第4四半期、サムスン電子の携帯電話事業の収益性は、アップルの3分の1にも満たない。たくさん売れても残るものは少ないということだ。ギャラクシーS6に自社開発のアプリを搭載して数兆ウォンの費用を節約し、ベトナムなど海外での生産体制を構築して原価競争力を上げてもいるが、今後はスマホと新事業のシナジーを考えるべきだ。現状はまだマシだが、アップルに押され、ファーウェイなど中国メーカーの追撃を受けて販売シェアが現状より下がれば、悩みはさらに大きくなるほかない。

サムスン最大の弱点として指摘され続けてきたソフトウェアも、いまだに弱点のままだ。スマホや半導体、ディスプレーなどハードにはそれなりの存在感をつくりあげてきたサムスンには、常にソフトウェア開発の貧弱さが指摘されて来た。10年前からこの分野を強化するため相当な投資を行ってきたが、結局振るわなかった。2009年には新たに組織をつくって莫大な資本と人材をつかって開発したソフト「パダ」は、アップルとグーグルの二強態勢に何も影響を与えなかった。最近、連合軍を構成し独自のOS(基本ソフト)「タイゼン」を開発したが、これが成功するかどうかは未知数だ。

強みのスマホを今後も維持・向上できるか

現在、タイゼンは低価格帯のスマホに搭載されている。ギャラクシーシリーズに搭載できるほどの力を持たせないといけない。しかし、市場では「タイゼンはオープンで汎用性のある立派なOSだが、二強からの牽制をかわし、独自の世界を構築するのは簡単ではない」という意見が支配的だ。

パソコンが急激に成長していた時期、あっという間に市場を占領したマイクロソフトが、後発企業から多くの牽制を受けてもその地位を維持してきたことが思い浮かぶ。長期的に、李副会長はこの難問を解かなければならない。ソフトがなければ、収益性を画期的に改善させるのは難しい。

バイオ事業に関する多くの投資に対しても、懐疑的な見方がある。この事業は他の事業と比べても参入障壁が高く、研究開発にも時間がかかる。もちろん、バイオシミラーと医療機器は押し寄せる高齢化社会には確実に付加価値を生む事業だ。しかし、誰もがこの事業に参入している。サムスンは後発企業だ。サムスンとしては、日本や米国を押さえ世界トップになった半導体事業の成功を再現させると意気込むが、それは簡単ではないという予測が支配的だ。ある製薬業界関係者は「ある程度の成果は出せるだろうが、熾烈な競争を制してシェアを獲得するには、既存企業の力が強すぎて難しいだろう」と指摘する。

組織掌握力も課題だ。サムスンは役員だけでも40人存在する巨大組織だ。リーダーとして確実な信頼を得るには、相当長い時間が必要だ。依然として官僚的との批判を受ける組織文化も改善しなければならない。創造的な事業にチャレンジしながらも、仕事の仕方も創造的でなければ結果を引き出せないだろう。「李健煕のサムスン」から「李在鎔のサムスン」として脱皮できるには、まだまだ課題が多い。

(韓国『月刊中央』2015年4月号)

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