インフラ復旧中心では被災地の衰退は深刻化、人口減を前提に地域振興策を--震災が突きつけた、日本の課題《3》/吉田典史・ジャーナリスト
「今後、日本は人口が一段と減り、10~20年後には大きな曲がり角を迎える。多くの人が賃金や年金、社会保障などで壁にぶつかる。そのとき、2011年3月の東日本大震災発生以降の復興のあり方が、実は誤りだったと気がつくと思う。私はその間違いを指摘していくことが使命だと思い、あえて苦言も呈している」
みずほ総合研究所の主任研究員である岡田豊氏は、強い口調で語る。地域振興をテーマに研究を続け、その一環として北海道南西沖地震(1993年)や阪神・淡路大震災(95年)の復興を現地に何度も足を運び、調査してきた。
それだけに、昨年の震災発生後、菅直人内閣(当時)の下で発足した復興構想会議を「被災地や東北、そして日本のあるべき姿が議論されていない」と指摘し、一石を投じた。
■岡田豊・みずほ総合研究所主任研究員
復興議論の“盲点”
岡田氏が特に問題視することは、被災地がどのように自立していくかといった、いわば地域振興が深く議論されないまま、社会資本整備中心で被災者の迅速な生活再建を図ろうとすることである。
「破壊された道路や堤防などを元に戻す復旧については具体的に話し合いがなされてきた。だが、復興についての議論は浅い。被災地を魅力ある町や地域にしていかないかぎり、本当の意味での復興はありえない。大規模な自然災害の後、政府や自治体にできることは復旧でしかなく、復興を進めることは難しいのかもしれない」
岡田氏は議論を進める際、前提として震災前の被災地の経済の実態を理解しておくことが重要だと説く。
その1つが、企業活動が停滞し、雇用の場が少なくなり、その結果、若年層を中心に人口が減りつつあったことだ。新日本製鉄が高炉を設けていた頃(1989年に休止)の釜石市(岩手県)のように、一時は企業誘致に成功した自治体もあった。だが、進出した企業の中には規模を縮小したり、撤退したケースも少なくない。