インフラ復旧中心では被災地の衰退は深刻化、人口減を前提に地域振興策を--震災が突きつけた、日本の課題《3》/吉田典史・ジャーナリスト

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「石巻市で言えば、被害の大きかった海岸付近の町を元の場所で震災前の姿に戻すことは避けたほうがいい。震災前にすでに衰退していた町を再現することは後々に禍根を残す。むしろ、商業が発展している蛇田(へびた)地区などに集団で移転し、魅力ある町を造り直すことを考えるほうが好ましい」
 
 筆者が石巻市広報課に取材を試みると、「防災集団移転促進事業の一環として被災地域の住民の集団移転は進めているが、さまざまな制約・事情があり、なかなか進んでいない」という。

岡田氏はそのような実情にも精通している。政府や自治体が一定の期間、被災者には1000万~2000万円ほどの生活保障をすることで、地域のあるべき姿を時間をかけて議論し直すことを提案する。

「被災地の自治体の復興計画を見ると、“迅速な復興”という言葉が書かれてある。住民らの生活を考慮し、早く元に戻したいという思いはわかる。だが、もっと丁寧に今後の地域振興を含め、検討するべきではないだろうか」

復興は10年近くの期間でとらえるべきものであり、そのうちの1年ほどを議論に費やしても無駄ではないという考えである。奥尻島のように短期間で安易に「復興」を進めると、状況が一段と悪化することを念頭に置いているのだろう。

筆者の考えを付け加えると、今後、震災前から全国の自治体は万が一に備え、震災後の町づくりを職員や住民、有識者と議論をしておくべきと思う。防災意識を高めることになり、震災後、復旧はもちろん、素早く復興にも取り掛かることもできるようになる。岡田氏が最後に語った。
 
 「10~20年後に、今の復興のあり方が正しいかどうかがわかる。私は不安をあおるわけではないが、現在のままでは、10年間で23兆円に達する莫大な復興予算が無駄に終わったとなる可能性があることは指摘しておきたい」

よしだ・のりふみ
人事・労務分野を中心に取材・執筆を続ける。著書に『あの日、「負け組社員」になった…』(ダイヤモンド社)、『いますぐ、「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)、『震災死 生き証人たちの真実の告白』(ダイヤモンド社)など。

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