インフラ復旧中心では被災地の衰退は深刻化、人口減を前提に地域振興策を--震災が突きつけた、日本の課題《3》/吉田典史・ジャーナリスト
「震災前から、さまざまな自治体から企業誘致について相談を受けている。企業が進出しやすいように、たとえば助成金などを設けるとスムーズに進むと思い込んでいる担当者がいる。企業誘致はそんなに甘いものではない。企業からすると、投資である以上、それに見合った利益が回収できないと判断したら進出はしない」
さらに岡田氏は、被災地の自治体が道路などの公共施設を造ることで、産業振興や雇用創出などにつなげようとする試みにも疑問を呈する。その1つの例として、釜石市の復興計画に言及した。計画では、三陸縦貫自動車道や東北横断自動車道釜石秋田線を「復興道路」として位置づけている。
「ハードを整備するだけでは地域の振興にはなりえない。地方の市町村では道路をはじめ、さまざまな公共施設をここ数十年で造ってきた。ところが、地域振興の効果が表れない。むしろ、地域が衰退していくケースが目立つ。やはり、ハード整備という試みには大きな誤りがあったのだと思う」
釜石市の復興計画には、津波で破壊された湾口防波堤の整備などもうたわれている。そのことを筆者が尋ねると、岡田氏はこう答えた。
「安心で安全な町を造ることは大切だとは思う。だが、それだけで人が長く住み、地域が振興すると考えるのは安易だ。釜石市に限らず、雇用がないところに若い層は住みたいとは思わない。生活のメドや人生設計が成り立たないところには住めない」
そして、北海道の南西沖地震で死者・行方不明者が259人と被害の大きかった奥尻島の現在の状況を指摘した。奥尻島には震災後、強固な防波堤(防潮堤)が設けられた。津波対策の先進地として海外でも知られるようになった。だが、その後も人口は減り続け、地域振興とは程遠く、著しい過疎が進んでいる。
■奥尻島に建設された津波避難用の人工地盤
■奥尻島の大型防波堤(防潮堤)
岡田氏は投げかける。「当時、復興資金は、1人当たり約2000万円になった。だが、復興事業は震災前からこの地域が直面していた問題を克服しようとするものではなかった。むしろ、復旧することに重きを置いた内容だった」