増税は必要だとしても、もっと総合的な議論を
同法は今年4月に公布となり、10月に施行される。「もっぱら派遣」を判断するための算定は来年4月以降であり、企業には人事政策上、極めて緊急性を帯びた問題だ。
「もっぱら派遣」に抵触する企業にとって、その対応策は大きく三つある。
すなわち、(1)母社による派遣社員の直接雇用化。これによって、派遣会社の派遣比率は引き下がる。(2)派遣会社による母社以外の企業への人材派遣の拡大。やはり、これによって派遣比率は引き下がる。そして、(3)連結子会社のグループ外の派遣会社への譲渡、である。
この3択を迫られている企業にとって、新たなファクターとして加わったのが消費増税である。厳しい競争を繰り広げている企業にとって、大幅な税負担増はつらい。したがって、判断のベクトルは(2)、(3)よりも(1)へと傾いておかしくない。が、直接雇用の場合、社会保険費用などが加わり、その負担増を軽減するために、企業は派遣活用のケースよりも採用人員を圧縮する可能性がある。結果として、パートタイマーなどの就業機会が狭まってしまうことになりかねない。
同様に、すでに企業が検討を続けており、それが現実化すれば、社会に微妙な影響が出かねないのが業務委託の分野である。近年、業務の一部を外部企業に委託するアウトソーシングが一般化しているが、その際の委託費も消費税の対象である。委託費も増税で税負担は倍化する。
企業による業務委託の拡大に拍車をかけたのは厳しいコスト競争である。これによって、事務サービス、システム開発、さらにはコールセンターなどの分野で、他社からの受託事業が広まった。ところが、コスト削減策である業務委託で発生する消費税負担が大幅に増えれば、業務委託のメリットは大きく後退しかねない。