増税は必要だとしても、もっと総合的な議論を
いやはや、目を覆いたくなるような大混乱ぶりである。
野田佳彦首相が「政治生命を賭す」とまで言い切った消費税率の引き上げ問題は、6月26日、関連法案が衆議院本会議で可決された。実現に向けて大きく前進したわけだが、その前後から民主党は分裂の大騒ぎだ。他党も政界再編とばかりに興奮のるつぼにある。多くのメディアも、増税の影響よりもこの騒ぎのほうに目を向けがちになっている。
しかし、ちょっと待ってほしい。国家のさまざまな制度の中にあっても、税制は所得の再配分など社会のありようを規定するほどの大きな意味を持つ枠組みである。そんな重大な制度の変更が単なる政局の材料にされてしまっては、納税者たる国民はたまったものではない。その影響について、きちんと検証される必要があった。
もちろん、増税措置である以上、納税者にとって負担増となることはいうまでもない。今回は2014年4月に8%へ、さらに15年10月には10%へ消費税率が引き上げられる。このスケジュールどおりに進めば、今から3年3カ月後には同じ買い物をしても税負担は倍化する。生活を圧迫するだろう。
そうであっても、増税しなければならないほどに国家財政が悪化してしまった。これは、誰でもわかっている。
だが、問題なのは、この税負担増がもたらしかねない社会的な変化だ。その一例を紹介したい。