【産業天気図・造船/重機】空前の造船ブーム続く。海外プラントでつまずくが、「晴れ」は続く

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07年度後半は一部プラントの変調で前回(9月時点)の「快晴」見通しを「晴れ」に変更、08年度も「晴れ」の空模様になる。
 07年度後半も、空前の造船ブームのさなかにある。07年1~9月の世界の造船受注量は、史上最高の1億2566万総トンを記録、9カ月間で06年の年間実績9960万総トンを大きく上回った。船価についても、大型の鉄鉱石運搬船が9600万ドルと03年の倍以上に上昇。日本各社の船台は10年、11年までほぼ埋まり、フル操業が続いている。
 07年度後半の1点の曇りは、海外プラントだ。サウジ・セメントプラントなどの採算急悪化が表面化したIHI<7013>は、今08年3月期の通期営業益予想を期初計画から550億円下方修正し、荏原<6361>もドイツの廃棄物処理プラントなどで320億円の特損を計上した。もっとも、IHIや荏原の”失敗”はいわば経験不足によるもの。中東中心に世界のプラント市場が沸騰し、資材・労賃の高騰が収益の圧迫要因になっているのは事実だが、海外プラントの比重が高い日揮<1963>は、むしろ早めの手当が奏功し、今08年3月期の業績予想を増額修正した。国内に強い新興プランテック<6379>も、石油・石油化学業界からの改造工事が拡大し、07年度は期初の減益予想から増益に転換、増配に進む。鉄鋼業界はじめ国内の旺盛な設備投資を背景に、クレーンや製鉄機械など「重厚長大」の単体機器も堅調。為替については、07年度内は各社ともほぼ予約でカバーしており、年度末にかけて円が跳ねても、影響はほとんどない。
 来08年度は、過去に受注した不採算船がほぼ一掃され、好採算船が引き渡しとなる。造船部門の収益は大きく改善するが、一方、新しい収益柱として期待される航空機分野では、ボーイングの最新鋭機787のデリバリーが半年遅れとなることが明らかになった。ただし、787はまだ量産に入る前の先行投資段階。三菱重工<7011>、川崎重工<7012>とも08年度の収益には響かないと見られる。不安材料は、国内の設備投資動向と海外プラントの受注見通しだ。とりわけ、原油価格の急ピッチの上昇で、逆に、産油国は先行きへの警戒感を高めており、プラント発注に慎重になる可能性がある。鉄をはじめ資材高も改めて収益の重石になりそう。豊富な受注残に支えられ、高操業・好収益は維持されるが、07年度前半のような「ゴーゴー」ムードからはややクールダウンした空模様になりそうだ。
【梅沢 正邦記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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