「相続増税」がやってくる! もう庶民も他人事ではない
東京・銀座の中央通り。ある老舗の和装小物店が1月末に閉鎖した。根強い固定客も多く、海外出張に出る商社マンが東京みやげを買っていくのでも有名だ。閉鎖の理由は明らかでないが、一説には「相続が原因」とも噂されている。
相続税には歴史がある。かつては最高税率が70%で、「3代で財産がなくなる」といわれたものだ。地価が暴騰したバブル時には、相続税を支払うために自宅を売る“悲劇”が話題になった。こうした事態を防ごうと、政府は優遇策を拡充、最高税率も50%まで引き下げられた。
だが、バブル崩壊後、地価が下落したにもかかわらず、非課税枠などの優遇策などはそのままだったことから、今度は“持たざる者”からの格差批判、不公正さへの非難が、逆に強まってきていた。
折からの財政不安、少子高齢化…。そこへ政権交代を経て、「消費税増税」というテーマが浮上。11年度の税制改正をもって、相続増税も取り上げられたというわけである。この背景には、逆進性を問われ、“庶民イジメ”と叩かれる消費増税への批判を少しでもかわすため、高所得者を対象にした相続税増税によって、「資産の再分配機能を回復し、格差の固定化を防止する」(『社会保障・税一体改革大綱』より)という、政府の思惑がある。
野田佳彦・現内閣になり、半年前の12年度の税制改正では、消費増税とともに、相続税増税は所得税増税などとともに、一体改革法案に盛り込まれた。
先の民主・自民・公明3党の修正合意では、消費税増税のみが合意され、相続税増税は年末の13年度税制改正へと先送りされたものの、増税という大きな方向性は変わらない。「税制改革の工程表」によれば、14年4月(消費税率の8%へのアップ)、15年10月(同10%へのアップ)と、15年1月(相続増税)は、完全に一体化されたスケジュールなのだ。
課税対象が拡大
では実際に、相続税増税の内容はいかなるものなのか。
仮に年末の税制改正で、相続増税が正式に決定すれば、実施は2015年1月1日からの相続が対象になる。ポイントは3つだ。
(1)基礎控除の縮小、(2)最高税率の引き上げ、(3)死亡保険金の非課税対象の縮小、である。
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