がんの9割は正しい知識があれば予防できる 遺伝、食事、運動、検診にまつわる誤解の数々
ただし、このようにして生まれたガン細胞は、すべてガンになるわけではない。なぜ、ガン化するかといえば、
この2つが大きな要因とされる。これらを防ぐためには、そもそもガン細胞が芽生える機会を防ぐこと、そしてガン抑制遺伝子・細胞の働きを低下させないことが重要だ。そのためには、「体質」「食」「習慣」について正しい知識を持ち、予防に努める必要がある。ただし、どれだけリスクを減らしても、ガン細胞が暴れ出すこともある。そのときは「検診」「医療」についての正しい知識で対応する必要が生まれる。
拙著『がんにならないのはどっち?』(あさ出版)では、これら5つの項目について、計35の情報を伝えている。その中でも特に勘違いされやすいトピックスと正しい情報をピックアップしてお伝えしていこう。
「父が大腸ガン、祖父が肺ガン」 遺伝するのはどっち?
「体質」の面で勘違いされやすいのは、「遺伝」に関する知識である。よく、「父も祖父も肺ガン、兄弟は胃ガンでなくなっている。うちは『ガン家系』だ」といった話を聞くが、この認識は誤りである。「ガン」と「遺伝」の関係は、ガンになりやすい体質、ガンになりくい体質、といったざっくりとしたレベルではない。遺伝に起因するのは、一部の特定のガンだけである。
特に遺伝リスクの高いものは、「大腸ガン」「乳ガン」「前立腺ガン」の3つ。つまり表題の答えは「父が大腸ガン」である。これらのガンは「遺伝性・家族性腫瘍」と呼ばれ、遺伝が関与する可能性が高い。そして、その原因は、「ガン抑制遺伝子の異常」の遺伝とされている。イメージするならば、通常の人は大腸ガンを抑え込む兵隊が100人いるのに、異常の人は10人しかいないようなものだ。特定のガンに対する免疫力が低いともいいかえられる。親類がこの3つのガンで亡くなっていることが多いときは要注意だ。とくにそのガンの検診に力をいれ、早期発見・治療を図ることを勧める。
一方で、遺伝要素は少ない「胃ガン」や「肺ガン」ばかりで亡くなる家系も多い。しかしこれは、「遺伝」ではなく「家風」が原因と考えられる。つまり、その家での習慣が起因しているということだ。
たとえば、胃ガンで亡くなることが多い家系であれば、「わが家の味噌汁は決まって濃いめ」「食卓に漬物が並ぶのが当たり前」といった塩分好きな家風、あるいは「家族全員、几帳面で短気」といったストレスのかかりやすい家風だったりする。胃に負担がかかりやすいため、胃ガンの発症リスクが高まっているのだ。遺伝リスクの低いガンで親類が亡くなることが多い場合は、その家庭の習慣を見直すことも考えてもらいたい。
胃ガンリスクを高める「塩」に要注意
「食」についてよくいわれるのは、「焦げたものを食べるとガンになる」ということだが、普段の生活で口にするレベルの焦げは、特に気にする必要はない。それより気にしてほしいのは「塩」である。
実は、ガンで圧倒的に問題となる調味料は「塩」だ。国立がん研究センターの調査においても、食塩摂取量の高いグループに属する男性は、最も低いグループに比べると胃がんリスクが約2倍高くなっている。
また、日本の塩分濃度の高い食品には、味噌汁、漬物、塩蔵魚卵(たらこ、いくらなど)、塩蔵魚介類(塩鮭、干物、塩辛など)といったものがあるが、それぞれの食品別に胃ガンリスクを比べた調査でも、ほとんどすべての食品で、摂取回数が増えるほど胃ガンリスクが高くなっている。
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