佐藤社長はそう表現する。こうした積み重ねがなければ、「どこで食べても資さんらしい一杯」は成立しない。答えは常に現場にある。資さんうどんの全国展開は、効率化の物語というよりも、ひとつずつ違いを埋めていく地道な実践の連続なのだ。
「職人の感覚」を言語化する
資さんうどんの麺づくりは、もともと九州にある自社の製麺工場を軸にしてきた。そこでは長年麺と向き合ってきた職人たちが、気温や湿度、その日の生地の状態を見ながら、微妙な調整を重ねてきた。数値では表しきれない感覚の積み重ねが、あの独特の食感を支えてきたのである。ただし、店舗網が広がれば広がるほど、そのやり方だけでは通用しなくなる。
九州から麺を運ぶのには、どうしても限界がある。当初は現地の外部業者に、同じ配合・同じ工程で製造を委ねた。だが、どうしても「資さんの麺」にならなかった。資さんうどんのあの柔らかでモチモチした麺は、店のアイデンティティと言ってもいい特徴である。この麺の食感がブレるわけにはいかない。
「麺も徹底的にこだわっています。粉も配合も工程も同じなのに、食感が違う。『これはおかしい』と、当初は社内のメンバーも頭を抱えました」
原因は、やはり水だった。水の性質が変わると、生地の締まり方や弾力の出方が変わり、麺の太さや歯切れにまで影響が及ぶ。理屈としては理解していても、現場で再現するのは容易ではない。そこで資さんうどんが選んだのは、すかいらーくグループの工場を活用し、自社基準で麺づくりを行うという方法だった。
「こちらの基準をもとに、資さんうどんとすかいらーくで、一緒につくる必要がありました」
温度や湿度を精密に管理し、科学的に分析できる環境の中で、職人自らが工場に入り込み、工程を一つずつ見直していく。試作を重ね、食べ比べ、修正する。その作業は半年以上に及んだという。
この過程で進んだのが、「感覚の言語化」だった。これまで職人の経験に委ねられてきた判断を、温度や時間、工程といった形で整理し、再現可能な形に落とし込む。
「職人の感覚だけでは、全国展開は難しい。でも、数字だけでも足りない。その両方が必要でした」
科学的な管理と、職人の舌や手の感覚を組み合わせることで、ようやく「資さんうどん」の麺を再現することができた。現在、関西や関東の店舗で使われている麺は、こうした試行錯誤の末にたどり着いたものだ。完全に同じ条件がそろうことはない。それでも、「資さんの麺」と呼べる水準まで引き上げるための工程が、全国展開を静かに支えている。
麺と同様、とくにこだわりを語るのが、出汁の管理だ。




















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