資料を見せても、写真を見せても、返ってくるのは言葉だけ。契約書にサインする式場はひとつもなかった。
「売れるか売れないかわからないものだから。新郎新婦が喜ぶかもわからない。空想の話みたいに思われたんでしょうね。前例もないし、どこもやってないから」
「これダメだな」と思った貞松さんは、大胆な行動に出る。
ないなら、自分で作る
「思い切って馬買ったんですよ。借金して」
融資は下りていない。契約も取れていない。それでも、個人で借金をして馬を買った。
問題は、馬車馬が日本で売られていないことだった。
「馬車を引ける馬は市場に存在しない。だからお肉屋さんに行って、白い馬を見つけて買ってきて、自分で調教することにしたんです」
長野の食肉市場へ足を運び、食肉になるはずだった馬のなかから、白い馬を探し出した。手つかずの、まっさらな馬。福岡に連れて帰り、一から調教をはじめた。
馬を置く場所もなかった。当時コーチをしていた大学の馬術部に「馬術を教えるから俺の馬を預かってくれ」と頭を下げた。馬車は、知り合いから使われていないものを借りてきた。
どうにかこうにか準備を整えると、貞松さんは白馬と馬車を結婚式場に連れて行った。
「もう説明するまでもなく、見たらみんなが笑顔になるんです。それで、すぐ決まったんです、契約が」
本物の白馬が、馬車を引いて結婚式場に現れる。その光景を目にした式場スタッフたちは、一瞬で心を奪われた。
最初の契約は、福岡の大手企業が運営する結婚式場だった。新しいことに挑戦したいという支配人の後押しもあり、正式に契約が交わされた。
契約書を手に、貞松さんは再び銀行へ向かった。大手式場との契約実績を見せると、ようやく融資が下りた。
「それで馬小屋建てて、馬車を買って、ボロボロのトラック買ってきて自分たちで塗装して。本当に手作りでのスタートですね」


















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