結婚式場の近くに拠点を構え、馬車事業をスタートさせた。結婚式やイベント、子どもの誕生日などに馬を派遣する。特に結婚式は人気で、事業開始から1年で240組が利用した。
小学5年生の時に抱いた夢は、20年以上の時を経て、ようやく形になった。
順風満帆ではなかった
しかし、そこから順風満帆だったわけではない。
最初の結婚式場での馬車事業が軌道に乗りはじめた2006年、長崎のハウステンボスから声がかかった。オランダをモチーフにしたテーマパークには、本場オランダから馬車チームが招かれていたが、10年経っても事業は低迷していた。
「うちのオランダの馬たち、仕事ができないんだ。なんとかしてくれないか」
馬術部出身の当時の社長は、貞松さんの実力を知っていた。話題の馬車事業を見ようと結婚式場まで足を運び、直接オファーした。ちょうどその式場との契約が切れるタイミングだった。貞松さんは条件を出した。
「馬のことをすべて俺に任せてくれるなら、行く」
交渉は成立。オランダ人チームはイベント部門に異動となり、貞松さんが馬車事業を引き継いだ。14頭の馬を、一から調教し直した。
結果は歴然だった。10年分の売り上げを、3カ月で達成した。
しかし2008年、リーマンショックが直撃する。経営体制が変わるタイミングで貞松さんはハウステンボスを去った。そして、思い切った選択をする。
「もう一回本気で競技やりたいなって」
関東の乗馬クラブから「うちを何とかしてくれ」と声がかかり、埼玉へ向かった。ここでも結果を出す。30ほどある埼玉の乗馬クラブのなかで、成績が低迷していたクラブの競技成績を、3年で県内トップに押し上げた。2011年には自身も全日本で優勝を果たした。
2012年、福岡へ戻った。SNSで近況を発信していると、結婚式場から連絡が相次いだ。
「『また馬車やってください』って連絡がきたんです。だから、契約してくれるんだったらやるよって」
結婚式場「ノートルダムマリノア」と契約を結び、再び銀行へ。厩舎、トラック、馬車、馬――また、ゼロからのスタートだった。しかし、前回の経験が生きた。
貞松さんが「夢みたいな契約」と表現するのは、「オプションではなくスタンダード」という契約形態だ。馬車サービスをスタンダードプランに組み込んでもらい、その会場で式を挙げるすべての新郎新婦が馬車に乗る。
「土砂降りでも雪が降っても、キャンセルされたことは1回もない。みんな馬車に乗りたいんです」と、貞松さんはうれしそうに笑う。


















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