「壊すしかない」と言われ続けた"岩に抱きつく廃墟"、大逆転の再生物語。廃墟好きが「栃木のマヤカン」と呼んだ施設は今

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工事としては外壁の補修、最初に建てられた建物の除却、その他減築やそれに合わせて外壁の新設など。

あちこちに手は入っているが、一方で建物内の階段、手すりその他はほとんどそのまま使われている。そのため、新しくはなっているものの、同時に歴史も感じる建物として再生されており、そのバランスが心地よい。

改修後の外観
改修後の外観。赤い壁のあるフロアがかつて浴室があったところで、現在はギャラリーになっている(写真:大谷グランド・センター)
エントランス裏
エントランス裏。このあたりは既存建物を生かして再生されている(写真:筆者撮影)

難航した金融機関との交渉

行政との交渉以上に大変だったのは銀行とのやりとり。現在のグランド・センターはアートスペースとカフェ、レストランからなる複合施設だが、当初はアーティストの活動拠点として賃貸するつもりだった。

改修後の館内
巨岩がそのまま建物内に。スリランカの建築家ジェフリー・バワの最高傑作と言われる岩肌がむきだしになったホテルを思い出させる(写真:筆者撮影)

「所有者が印刷というコミュニケーションカルチャーの一翼を担ってきた事業者ですから、この建物に文化をどう入れていくかは最初からのテーマ。

その具体策としてアーティストの活動拠点を賃貸することを考えていたのですが、金融機関から賃借料の前例を挙げることを求められて行き詰まりました」(和泉さん)

展示スペース
展示スペースのひとつ。大谷石の壁が印象的(写真:筆者撮影)
カフェフロア入口
カフェフロア入口。壁のビカクシダは大谷石のプレートに植えられている(写真:筆者撮影)

都心の賃貸物件が多い地域であれば周辺相場を数字で出すことはできるが、地方で物件のない地域ではそもそも相場自体が存在しない。

さらにアトリエなどの創作拠点は都心でも事例がほとんどなく、地方であればなおさら。そこでこの地域で同種の貸し方をした場合の賃料を前例として出すのは無理だ。相場も、物件もまだ、そこにはないのだ。

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