第2に、「人」の問題。欧州各国から多数の若者がISに参加している問題への対処が必要だ。欧州では一般的に若者の失業率が高く、移民の状況はさらに深刻だと指摘されている。しかも、最近は難民の大量流入が各国で問題となり、その排斥を叫ぶ右翼政党が議席を増やす傾向にある。そうなると移民に対する偏見や差別はますますひどくなり、社会問題が深刻化する。そこがISにとって付け目であり、不満な若者をISの戦士としてリクルートしやすくなるという構図になっている。
このような政治的・社会的問題は根が深いため即効力のある特効薬はない。時間はかかるが、経済を活性化し、移民や若者の環境を改善し、国民の間の矛盾と対立を解消させていくしか方法はない。G20の声明が、「いかなる宗教、国籍、文明、民族集団とも関係づけられ得ない」と述べたのは、事件発生の責任を追究するだけでは足りず、社会に根差す広範な問題にもメスを入れる必要があることを示している。
資金を絶つことはできる
第3に、ISへの資金流入を絶つことが必要である。これは比較的短期間に効果を発揮しうる手段であり、前述したようにG20声明がIS関係者の資産凍結への協力、テロ資金供与の犯罪化などを呼びかけたのは当然だ。
ISの重要な資金源は石油収入であり、有志国による空爆では石油を輸送する車列を重点的に攻撃対象としているが、いまのところ資金源を止めるほどの効果を上げるに至っていない。
そもそも日本などでは考えられないことだが、地域によっては石油の非合法取引を食い止めることは簡単でないらしい。ルートは複数存在し、多数の国が関係しているからである。
ロシアのプーチン大統領は16日、G20後の記者会見で、ISに資金提供している国がG20の加盟国を含めて40カ国に上るという見方を示した。G20の会議の場では、ロシアの偵察衛星が撮影した、ISによる原油の販売を示す画像を示した上で、どのような規模で行われているかを説明したそうだ。もちろん関与しているのは政府ではなく、原油販売に関係している組織や、ISの主張に共鳴する支援者などであろうが、このような石油取引の実態の解明と資金源の遮断は今後の緊急課題である。
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