クルーグマン氏「テロへの恐れが最大の危険」

パニクる西側諸国が今すべきこととは

フランスは今も、将来的にもISに征服されることはない (写真:Pierre Terdjman/The New York Times)
 

私も多くの人と同様に、パリのニュースをひたすら追いかけている。他のことは差し置いて、あの恐怖から目を離さずにいるのだ。それは人間として自然な反応だ。だが、はっきり言っておきたい。テロリストが求めているのは、そうした反応なのだ。そのことを誰もが理解しているわけではない。

 たとえば、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事はこう断言した。「これは西側文明の破壊を狙った組織的な行動だ」。いや、そうではない。そうではなく、「パニックを拡大することを狙った組織的な行動」であり、両者はまったく異なるものだ。そして、ブッシュ元知事のような発言がその違いをあいまいにし、テロリストを実際よりも強力に見せてしまう。こうした発言は、テロリストの大義名分に手を貸すだけだ。

フランスはISに征服などされない

 冷静になって、フランスがどんな国であるか考えてみよう。どの国にも問題があるように、フランスにも問題はある。しかし、フランスは確固たる民主主義の国だ。国防予算はアメリカに比べれば少ないが、それでも強力な軍隊を抱え、その気になれば軍隊を大幅に増強できる資金がある(フランスの経済規模は、シリアの約20倍だ)。フランスは今も、将来的にも、「イスラム国」(IS)に征服されることはない。西側文明の破壊など、まったくあり得ない。

 では、金曜日の襲撃はいったい何だったのか。レストランやコンサートホールで無作為に人々を殺すということは、犯人たちの根本的な弱さを反映した戦略である。あの攻撃で、パリにイスラム帝国が建設されることはない。しかし、恐怖感を引き起こすことはできる。だから、あの行為がテロリズム(terrorism:terrorは恐怖の意)と呼ばれるのである。それを戦争と呼んで威厳を与えるべきではない。

 ここで重要なのは、恐怖感を和らげることではない。そうではなく、我々の社会でのテロによる最大の危険は、誤った反応から生じるのであり、直接的な危害から生じるのではないと明確に示すことだ。誤った反応はさまざまに生じる可能性があり、それ認識することは非常に重要だ。

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