クルーグマン氏「テロへの恐れが最大の危険」 パニクる西側諸国が今すべきこととは

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

 仮に、フランスや他の民主主義国が弱腰な政策でテロに対応したら、それは間違いなく非常に良くないことだ。たとえば、テロリストが自国から手を引くことを願って、フランスや他の民主主義国がISに対する国際的な取り組みから離脱するなどだ。弱腰を望む人がいないとは言わない。実際、西側の帝国主義がすべての悪の根源であり、他国に干渉するのを止めればすべてが上手くいくと強く信じている人もいる。

 しかし、政府はもちろん、主な政治家の中には、テロリストの要求に屈しようと言う人はほぼ見つからない。アメリカ国内での弱腰を責める声は、保守派が満足するほど強い言葉を使わない、リベラル派に向けられているようだ。

脅威をすべて排除しようと考えるのは危険

 もっと大きなリスクは、テロのターゲットとなり得る国々が、考えられるすべての脅威を排除して完璧な安全を確保しようとすることだ。こうした反応は、必ず事態を悪化させる。なぜなら、世界は大きく複雑で、超大国ですらすべてを正しく整えることはできないからだ。

9・11同時多発テロで、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官は側近たちにこう言った。「すべて一掃しろ。関係があろうとなかろうと」。そしてただちに、イラクに侵攻する口実として、テロを利用することを提案した。その結果起こったのは、事実上テロリストを強化することになった悲惨な戦争で、ISが台頭する舞台もここで作られた。

 はっきりさせよう。これは単に判断が悪かったという問題ではない。そうなのだ。人はテロを政治的な利益のために利用できるし、利用するのだ。たとえば、政治的にメリットのがあり素晴らしいと想像するような、ちょっとした戦争を正当化するなどのために使う。

 テッド・クルーズ上院議員のような人が何を想像しようと、罪のない民間人を殺すことへの抵抗感をなくしても、アメリカの力に限界があることには変わりがない。しかし、その抵抗感をなくせば、テロリストの採用活動には驚くほどの効果が出るだろう。

次ページテロですべてが変わることはない
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事