―――具体的な例として印象に残っている合格者はいますか?
孫:象徴的なのが、東大工学部に合格したTさんです。
この人は飛行機の研究をしていて、東京大学が主催する高校生向け研究プログラムに参加し、空力性能を損なわずに機能する翼の技術について研究していました。
―――高校生で空力ですか。かなり専門的ですね。
孫:はい。高校2年生から高校3年生の冬までずっとこの研究を続けていました。ただ、そんなに長期間研究しているにもかかわらず、本人の中では「やり切った」という感覚はなかったそうです。
むしろ、「まだわからないことが多すぎる」「実験条件を変えたらどうなるのか確かめ切れていない」という強い消化不良感が残ったと言っていました。
―――普通なら、そこまでやったら満足してしまいそうですが。
孫:そうですよね。でも、インタビューの中でこんなことを言っています。
『この消化不良感を解消するならば、やっぱり東大に行くしかありませんよね』
この言葉が、非常に象徴的だと思っています。つまり、本人の中では「この研究を続けるために、最適な環境が東大だった」という発想だったわけです。
―――それは一般入試の考え方と逆ですね。普通、一般入試だと「合格するために何をやるか」から考えますから。
孫:はい。一般入試では、「この大学に合格するために、今はこの勉強をする」という逆算型の思考が中心になる場合が多いですよね。
一方、東大推薦合格者の多くは、「やりたいことをやり続けた結果、東大という選択肢に行き着いた」という順番で考えています。Tさんにとって東大はゴールではなく、通過点であり研究を続けるための手段だったのだと思います。
東大は滑り止めだった
―――こういう例は、Tさん以外にもいましたか?
孫:かなりいますね。たとえばMさんのケースです。
この人は中学時代に学んだ「光」の単元がきっかけで物理に興味を持ち、そこから発展して量子コンピュータの研究をしたいと考えるようになりました。
自分で調べた結果、海外ならスタンフォード大学、国内なら東京大学が最先端だとわかり、第1志望は海外大学、東大は滑り止めという形で受験したそうです。
―――東大が滑り止め、というのは衝撃的ですね。
孫:でも、東大推薦合格者だと実は珍しくありません。Tさんも海外大学と東大を併願していました。


















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