市場を支える「信頼」を考えよう--野口悠紀雄×ちきりん白熱対論「数の突破力を教えよう」番外編・その2
■なぜ霞が関は市場原理が嫌いなのか
ちきりん マーケットでの「信頼」の存在はとても大事なことだと思います。いつも不思議に思っていることがあります。日本は資本主義で成功してきて、高度成長で豊かになった国なのに、国の中心にいたはずの霞が関の人たちは、市場原理を信じていない。
最近、高速バスで大きな事故が起こりました。その結果を受けて、規制を強化しましょうという話になるのか、あるいは、規制緩和は続けつつ監督を強化するのか、どちらを選ぶべきかという議論がたびたびあります。
野口 日本の場合、ああいう事故が起きれば、省庁にとっては「ほらみろ、やっぱり事故が起きただろう、我々が規制しないとだめだ」いうことになる。規制強化のすべてとはいわないが、9割は官僚の縄張り拡張のためになされるのです。
ちきりん 官僚には、市場原理に任せてはいけないとの感覚があるのでしょうか。
野口 当然あります。それは、彼らの非常に重要な信念です。
ちきりん なぜなのでしょうか。
野口 答えは非常に簡単です。法学部の卒業生だからです。
ちきりん 法学部の学生は何でもしゃくし定規に考えたり、数字を基に議論しない傾向があるということですか?
野口 本来のリーガルマインドとは、そういうものではないと思いますが、東大法学部を筆頭に日本の法学部の主流は法律解釈学だから、そうなってしまう。
ちきりん それは組織の問題なのでしょうか? それとも中にいる人たちの問題なのでしょうか?