注文方法がわからずモタついていると、後ろに並んでいたイカつめのオジさんに「頼まないの?」と言われて、先に注文された。ナチュラルに割り込まれたので戸惑いながらも、そのオジさんのマネをしたら無事に注文が通った。
数分後に店主らしき人から「はい、お待ち」と丼が渡された。なみなみと注がれたスープに、ゆで卵、海苔、長ネギ、めんま、そしてチャーシューが並ぶ。余計な装飾は一切ないシンプルなラーメンだ。潔い。
麺を箸で持ち上げると湯気が立ち上がる。一口啜る。美味い。丼の中で揺れる真っ黄色な黄身をスープに沈めて、口に放り込む。表面にキラキラと浮かぶ背脂。見た目は重そうなのに、意外とあっさりしている。箸でチャーシューを掴む。それほど厚くはないが、噛むと肉の繊維がほぐれ、ほどよい塩味が広がる。肉々しい。数分で完食し、「ごちそうさまでした」と言ってカウンターへ丼を置いた。
常連のラーメン屋があるだけで、街が身近に
後日調べたところ、白山ラーメンは夜9時から朝4時までやっているらしい。まさに酒飲みのためのラーメン屋だ。その後も「また行こう」と思いつつ、常連さんが大勢いる独特の雰囲気に躊躇していた。飲み会の度に行こうと思うのだが、またモタモタ注文して割り込まれたら嫌だなぁなんて考えて、「まぁ今日はいいか」と家に帰っていた。
それから1カ月ほど経った頃、上司に3時間説教され続けるという地獄みたいな飲み会があった。その帰り道、千石駅のホームに立った瞬間、まっすぐ家に帰る気が失せた。ふらふらと白山ラーメンへ足が向く。店の前に近づくと、相変わらず常連らしき人たちが道端で丼を持ちながらラーメンを啜っているという不思議な光景。またジロジロ見られている気がして緊張したが、前回の反省を活かし、今度はちゃちゃっと注文できた。
数分後、常連らしき人の隣で丼に顔を埋めた。前回はただただラーメンを食べるだけだったが、今回は周りを見る余裕があった。隣にいる中年男性は一心不乱に麺を啜っており、向かいの女性も黙々と箸を動かしている。ジロジロ見られていると思ったのは被害妄想。誰一人、僕なんて気にもしていなかった。


















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