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フィジカルAIの勃興で懸念される産業機械メーカーの「下請け化」、エヌビディア支配が強まる中で日本メーカーは存在感を失う可能性がある

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単純な製品展示会、すなわち見本市としてのCESは、2008年のリーマンショック以降、急速に収縮し始めていた。完成品を並べて商談する場から最新技術をいかに産業へ組み込むかを議論する場へ舵を切ったのは、今にして思えば必然でもある。

とはいえ、コロナ禍を挟んだ数年、CESは迷走しているようにも見えた。巨大な場が持つ「年初の祝祭」と「商談の磁場」を、どう新しい形へ移し替えるのか。その模索が続いていた。

しかし今年のCESは、ようやく“次の顔”をはっきり見せ始めた。かつてのCESが、広い全米のメーカーと流通関係者が集まり、その年の商戦を占うイベントだったとすれば、その意義はすでに薄れている。現代のエコシステムは、1社の垂直統合だけでは新しい価値を生みにくい。パートナーシップの形を探り、アイデアを共有し、異なる業界の利害を接続しながら、グローバルな産業の“結び目”を作る必要がある。

AI、量子コンピューティング、モビリティ、ロボティクス、ヘルステックなど、今年のCESには、異なる領域と異なる業種にまたがるイノベーションが集まっていた。量子のように、なお多くのブレークスルーを必要とする領域もある。だが、大胆なビジョンを語り、それを現実の事業へ移行するための相手を探す「グローバルの交渉空間」として、CESが再配置されつつあるのだ。

その象徴が、新設スペース「CESファウンドリー」である。

AIは「製品の一部」へ

CTAプレジデントのキンジー・ファブリツィオ氏は、「今年のCESで皆さんが目にするのは、AIのコンセプトがコンテンツからプロダクトへと移行する瞬間だ」と話した。

チャットGPTの登場以来、AIといえばテキストや画像を生成するソフトウェアを指すことが多かった。だが、いま強い流れになっているのは、AIが身体を獲得しつつある、という変化である。冷蔵庫が食材を認識し、トラクターが自律的に畑を耕し、車が自ら運転し、ヒューマノイドが実際の工場で働く。いわゆるフィジカルAIが、製品と産業の中心へ入り込んでいる。

CTAショーディレクターのジョン・ケリー副社長は「AIをハードウェアの中でどう具現化するかを示しているのが今年のCESだ」と言う。「DX」が業務をテクノロジーで見直すことだとすれば、AI活用は「IX(インテリジェント・トランスフォーメーション)」といえる。データを集めて可視化するだけではなく、そのデータに基づいて自律的に行動を起こし、現実のプロセスを動かす。ここにあるのは、単なる効率化ではない。「技術をどう使うか」という思想の違いなのだ。

そしてIXのなかでも、物理的な製品や装置にAIを組み込むフィジカルAIは、最も期待が大きいジャンルであり、CESの性質そのものを変えつつある要因でもある。

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